最低賃金が上がったら会社は何をする?│人件費の増加額を計算して90日で利益を取り戻す中小企業の実践経営【2026年最新】

2026年度の地域別最低賃金は、答申ベースの全国加重平均額が1,177円となり、前年度から56円上昇しましたが、この数字を見たときに経営者が最初にやるべきことは、慌てて全商品の値上げを決めることでも、採用人数を減らすことでもありません。

最初に調べるのは、自社では年間いくら人件費が増えるのかです。

ここを曖昧にしたまま対策を始めると、年間80万円の負担増しかない会社が必要以上の値上げをして顧客を失ったり、反対に年間300万円以上増える会社がコピー用紙や電気代を数万円節約するだけで「経費削減を進めた」と安心したりすることになり、本当に直すべき場所へ手を付けられません。

たとえば、給与体系全体を確認した結果、年間240万円の負担増になるとします。

240万円という数字は重く見えます。

ところが、12か月で割れば20万円ですから、経営者が本当に解決しなければならない問題は「年間240万円をどうするか」ではなく、「毎月20万円を、現在の会社の中からどうやって新しく生み出すか」へ変わります。

その20万円についても、一つの商品を大幅に値上げして全部取り戻す必要はなく、価格の見直しで8万円、利益の薄い商品の改善で5万円、社員が使っている時間の見直しで3万円、追加サービスや新しい受注で4万円というように分ければ、会社の各部署が実際に動ける数字になります。

ここまで小さくすることが、この記事の出発点です。

そして、商品を調べるときには「何が一番売れているか」ではなく、一件売った後に本当はいくら残っているのかを確認し、人手不足を調べるときには「何人足りないか」ではなく、現在いる社員が年間何時間を利益につながらない仕事へ使っているのかを確認します。

給与についても同じで、最低賃金へ合わせて金額だけを変更するのではなく、現在25万円の社員が27万円になるためには何ができるようになればよいのかまで決め、設備やAIについても「便利そうだから入れる」のではなく、300万円を投じたら年間何時間が戻り、その時間を使って何円の粗利を新しく生み出せるのかまで計算します。

そして90日後。

最初に必要だった月20万円が、価格変更や仕事の整理によって19万円まで改善できたのであれば、会社が抱える問題は、もう「年間240万円も人件費が増える」ではありません。

残りは、月1万円です。

月100件販売する商品なら、一件100円。

5,000円の追加サービスなら、月2件。

一件1万円の新しい仕事なら、月1件です。

経営者が「どうすればいいのか分からない」と感じる問題の多くは、問題そのものが大きすぎるのではなく、大きな数字のまま考えているために手を付ける場所が見えなくなっていることがあり、年間を月へ、月を商品一個へ、社員の一日を一時間へ、一時間を10分へと分解していけば、明日どの資料を開き、何を計算し、誰に何を頼めばよいのかまで見えるようになります。

ここから行うことは、五つだけです。

人件費を計算する。

商品ごとの本当の利益を調べる。

社員の時間を測る。

給与と人材の仕組みを直す。

設備やAIを数字で判断し、90日後に答え合わせをする。

難しい経営理論を覚える必要はありません。

必要なのは、自分の会社の数字です。



最低賃金の改定が決まったら、最初に給与台帳と勤怠記録を出し、最低賃金に近い従業員だけではなく全員について、現在の賃金、変更後の賃金、月間労働時間、月間増加額、年間増加額を並べます。

なぜ全員を見るのか。

最低賃金の上昇は、その金額で働いている人だけの問題ではないからです。

たとえば、時給1,120円で月100時間働く従業員が10人いて、会社として一人当たり60円引き上げるなら、60円×100時間×10人で月6万円、年間では72万円の給与増になります。

ここまでは簡単です。

しかし、その会社に3年間勤務し、顧客対応から新人教育まで任せられる人が時給1,200円で働いていたとしたら、新しく入った人の時給が1,180円になった時点で、その差はわずか20円になります。

3年間積み上げた経験。

一人で判断できる仕事。

顧客との関係。

後輩へ仕事を教える責任。

それらを含めても20円しか違わない状態をそのままにするのかという問題が出てくるため、経験者を1,250円へ変更し、その上の人も調整し、正社員との給与差まで確認していけば、会社の負担増は最初に計算した72万円では収まらなくなります。

そこで必要になるのが、「最低賃金対象者の増加額」ではなく、「給与体系を直した後の会社全体の年間増加額」です。

仮に、それが240万円だったとしましょう。

この240万円を見たところで、まだ対策は始めません。

12で割ります。

月20万円です。

ここで初めて、経営者が考えられる数字になります。

たとえば価格から8万円、利益の薄い商品の改善から5万円、仕事時間から3万円、追加サービスや新しい受注から4万円と分ければ、一つの巨大な240万円が四つの小さな仕事へ変わります。

そして最初に調べるのが、過去12か月の商品です。

ただし、売上順には並べません。

一件売った後に、本当はいくら残っているのかで並べます。

10万円で販売しているサービスがあり、材料や仕入れに2万円、外注に1万円、その他の直接費用に5,000円かかっているなら、ここまでで6万5,000円残っているため、一見すると十分な利益があるように見えます。

ところが、この案件へ社員が20時間使っていたらどうでしょうか。

会社が社員一時間当たりの負担を3,000円程度と見ているなら、20時間で6万円です。

残りは、ほとんどありません。

それでも、この商品を月20件販売すれば売上は200万円になりますから、売上表だけを見ている会社では「主力商品」と判断され、営業担当者には「もっと売ってほしい」という指示が出るかもしれません。

しかし、月20件を処理するために社員が400時間使っているのであれば、販売量を増やすほど現場は忙しくなり、残業が増え、人を採用する必要まで出てくるのに、会社へ残る利益はほとんど増えないということが起こります。

ここで値上げをする前に、20時間の中身を見ます。

見積もり2時間、打ち合わせ3時間、資料作成5時間、実作業7時間、修正3時間だったとしましょう。

資料作成5時間のうち、過去案件と同じ説明を毎回作り直しているなら共通部分をテンプレート化し、5時間を2時間へできるかもしれません。

修正についても、何度でも無料で受けているため3時間になっているのであれば、契約時に無料修正の範囲を明確にして1時間へ減らす方法があります。

これだけで一件5時間です。

月20件なら100時間。

一時間3,000円なら、月30万円相当の社員時間が戻ります。

値上げを考えるのは、その後です。

工程を整理しても利益が足りないのであれば、会社として価格から月8万円を改善するという目標に対し、月500件販売している商品なら一件160円で8万円になりますから、5,000円の商品なら5,160円程度へ変更すれば計算上は届きます。

もちろん市場価格や顧客の反応を無視して160円上げるという意味ではなく、ここで重要なのは「10%値上げするか、据え置くか」という大ざっぱな判断ではなく、自社に本当に必要なのは一件160円だと分かった状態で価格を考えられることです。

さらに価格変更後は、販売件数だけで成否を判断しません。

5,000円の商品で変動費が2,500円なら、一件販売したときに2,500円残り、500件なら125万円ですが、5,500円へ変更して変動費が同じなら一件3,000円残るため、従来と同程度の125万円を確保するために必要な販売数は約417件になります。

500件が480件になったとしても、それだけで失敗ではありません。

販売件数は20件減っていますが、会社に残る金額はどうなったのか、20件分の製造・配送・請求・問い合わせ時間はどうなったのかまで見れば、以前より利益が増えている可能性があります。

もう一つ調べたいのが、請求していない仕事です。

急ぎの見積もり、追加修正、特別な資料、休日対応、個別配送、細かな仕様変更など、一件一件は小さいため「これくらいなら」と無料で対応している仕事でも、月50件に一件30分使っていれば月25時間、一時間3,000円で見れば月7万5,000円相当の社員時間になります。

すべて有料にする必要はありませんが、重要顧客へのサービスとして残すもの、基本料金へ組み込むもの、追加料金を設定するもの、今後は受けないものという四つに分ければ、長年見えなくなっていた無料労働を整理できます。

この章で必要なのは、立派な資料ではありません。

一枚で十分です。

確認する数字
年間人件費増加額240万円
1か月当たり必要改善額20万円
価格変更で確保8万円
低採算商品の工程改善3万円
無料対応の見直し2万円
この章で改善できる金額13万円
次章以降で必要な金額7万円

この表が完成した時点で、経営者の頭から「240万円をどうしよう」という問題はいったん消して構いません。

残りは月7万円です。

商品と価格を見直しても現場から「人が足りない」という声が出るのであれば、すぐに求人を出すのではなく、月曜日から金曜日までの5日間だけ、社員全員に30分単位程度で何をしていたのか記録してもらいます。

これは社員を監視するためではありません。

会社を調べるためです。

8時30分から9時までメール、9時から10時まで会議、10時から11時30分まで見積もり、11時30分から12時まで入力作業という程度で十分ですから、細かすぎる記録を求めて現場の負担を増やす必要はありません。

5日後、全員分を集めます。

すると、会議、日報、入力、見積もり、資料作成、電話、メール、ファイル検索、承認待ち、移動などへ、会社全体でどの程度の時間を使っているのかが見えてきます。

社員10人が毎朝30分会議をしているなら、一日5人時間、月20営業日なら100時間、年間240営業日なら1,200時間です。

毎朝30分。

そう聞くと短く感じます。

しかし会社は、年間1,200時間を使っています。

会議をなくす必要はありませんが、30分を15分へできるなら年間600時間が戻り、一時間3,000円相当として見れば180万円分の社員時間を別の仕事へ移せることになります。

ただし、ここで「180万円の経費削減」と考えてはいけません。

社員の給与はそのままだからです。

戻ってきた600時間を営業担当者なら既存顧客への提案、製造担当者なら追加生産、管理担当者なら請求漏れや回収管理、商品担当者なら利益率の高い商品の改善へ移し、そこで新しい粗利を生み出して初めて、600時間を取り戻した意味が生まれます。

日報も同じように調べます。

社員10人が毎日20分使っていれば、一日200分、年間240日なら800時間です。

責任者が毎日読み、指示や判断へ使っているなら必要な800時間かもしれませんが、ほとんど読まれておらず、別のシステムへ同じ内容まで入力しているのであれば、項目を半分にする、週次へ変更する、既存データを使うなどの方法で20分を10分へできる可能性があります。

それだけで年間400時間です。

ファイル探しに一日10分使っている会社もあります。

社員10人なら年間400時間です。

顧客ごとに保存場所が違い、担当者ごとに名前の付け方が違い、「最終」「最新版」「最新版2」といったファイルが並んでいるなら、社員の検索能力を上げるより、保存場所とファイル名の付け方を統一したほうが早く、10分を5分へできれば年間200時間を取り戻せます。

見積書が一件30分、月100件なら年間600時間です。

過去の見積書を20~30件並べ、商品説明、支払条件、注意事項など毎回同じ文章を書いている部分を共通化し、30分を15分へできれば年間300時間戻ります。

一つ一つは小さい改善です。

しかし、600時間、400時間、200時間、300時間と積み上げていくと、「一人採用しなければ回らない」と思っていた会社の中に、かなりの時間が残っていることがあります。

ここで初めてAIや業務システムを検討します。

順番を逆にすると、不要な仕事を高速化するだけになるからです。

定型メールへ月50時間使っているなら、導入前の50時間を記録し、一か月試して25時間になったのであれば年間300時間戻りますが、45時間にしかならなかったのであれば年間60時間程度ですから、利用料金や確認作業まで含めて続ける価値があるのかを判断します。

「導入したか」ではなく「何時間減ったか」。

ここだけを見ます。

社員10人の会社なら、最初の目標は年間500時間程度でも構いません。

一人年間50時間です。

月なら約4時間10分。

一週間なら一人一時間ほどですから、会議、日報、入力、検索、見積もりの中から一週間に一時間取り戻すだけでも、会社全体では年間約500時間になります。

その500時間を取り戻した後で、もう一度「本当に人が足りないか」を考えます。

月160時間程度の仕事が残るならフルタイム採用を検討できますが、月80時間程度なら短時間勤務、外注、既存社員の配置変更なども比較できるため、不要な仕事を残したまま年間数百万円をかけて一人採用するという判断を避けられます。

この章が終わったら確認すること

  • 5日間だけ全社員の仕事を30分単位で記録したか
  • 年間100時間以上使っている仕事を抽出したか
  • 会議・日報・入力・検索・見積もりを年間時間へ換算したか
  • 不要な仕事を削ってからAIやシステムを検討したか
  • 取り戻した時間を何の仕事へ使うのか決めたか
  • 年間500時間程度を戻しても、本当に人が足りないのか確認したか
  • 採用する場合、その人が年間いくらの粗利または時間を生み出すのか決めたか

ここまで行って、それでも人が足りないのであれば、その採用には理由があります。

最低賃金が上がると新しく採用する人の給与水準ばかりに目が向きますが、新人の給与だけを上げ、3年、5年と働いてきた社員の給与をほとんど動かさなければ、仕事を教える側と教わる側の給与差が極端に縮まり、長く働いている社員ほど会社への納得感を失うことがあります。

そこで最低賃金への対応と同時に、現在25万円の社員が27万円になるためには何が必要なのか、27万円の社員が30万円になるにはどこまで仕事を任せられなければならないのかを職種ごとに決めます。

ここで「頑張ったら上げる」では足りません。

本人から見れば、何をもって頑張ったと判断されるのか分からないからです。

営業職なら、売上だけではなく粗利、既存顧客の継続、回収状況、顧客対応、後輩育成などから自社が本当に必要とする三つから五つ程度を選び、製造職なら生産数、不良率、納期、技能、改善提案などを使えば、本人が「次に何ができればよいのか」を理解しやすくなります。

評価項目を20個も30個も作る必要はありません。

多すぎれば、結局誰も覚えません。

半年ごとの面談でも、「もう少し頑張ってほしい」と伝えるだけではなく、「この二つは一人でできるようになったので、次はこの仕事を任せられる状態になれば、次回評価で一段上の給与水準を検討する」と伝えれば、給与と仕事の成長がつながります。

そして給与を考えるときには、退職一人に会社がいくら使うのかも計算してみてください。

求人掲載費30万円、採用担当者20時間、管理職の面接10時間、先輩社員による教育100時間、PCや制服などの準備費用、さらに独り立ちするまでの生産性低下まで含めれば、一人が辞めるたびに会社が負担する金額と時間は決して小さくありません。

長年勤務した人なら、さらに大きなものを失います。

主要顧客への対応方法や設備の癖、過去のトラブル処理、仕入れ先との調整方法など、その人の頭の中にしか残っていない情報まで会社から消えることがあるため、全社員について「この人しかできない仕事」がないか一度確認しておく必要があります。

社員Aしか操作できない設備がある。

社員Bしか対応できない顧客がいる。

社員Cしか作れない月次資料がある。

この状態を見つけたら、その人を替えるのではなく、作業方法を残し、別の社員が一度実際にやってみて、本人が一週間休んでも仕事が止まらない状態へ少しずつ変えていきます。

社員面談についても、「何か不満がありますか」と一度聞いて終わらせるのではなく、仕事量、給与、評価、休日、上司との関係、設備、今後やりたい仕事などに分けて確認すると、本人も話しやすくなります。

「仕事量が多い」と言われたら、どの仕事が一番時間を取っているのかまで聞きます。

そこで前章の5日間調査を使います。

本人の処理能力が低いと思っていたところ、実際には同じ情報を二つのシステムへ何度も入力していたことが分かれば、社員へ「もっと早く」と求めるのではなく、会社側が二重入力をなくせばよいのです。

退職が続いている会社なら、過去3年間の退職者について、在籍期間、所属部署、直属上司、退職時期、退職理由を並べてみると、特定部署だけ半年以内の退職が多い、特定の時期に集中している、新人が3か月程度で辞めているなどの共通点が見える場合があります。

新人が短期間で辞めるのであれば、入社初日、一週間、一か月、三か月で誰が何を教えるのかを決め、作業項目について「説明済み」「練習中」「一人でできる」という三段階程度で管理すれば、「教えたつもり」と「聞いていない」の食い違いを減らせます。

採用目標についても、「今年5人採る」で終わらせないほうがよいでしょう。

見るのは一年後です。

5人採って3人辞めれば残るのは2人ですが、3人採って3人残れば3人増えていますから、採用人数だけを追い続ける会社より、入社した人が一年後に何人残っているかを見る会社のほうが、人手不足の実態を正確に把握できます。

そして毎月、一人当たり粗利を確認します。

社員10人で月間粗利500万円なら一人50万円ですが、商品価格、仕事時間、教育などを改善した結果、同じ10人で550万円になれば一人55万円となり、この5万円がどこから生まれたのかを確認できれば、給与を上げられる余地についても以前より具体的に判断できます。

給与・人材について経営者が持っておく表

見る項目確認する内容
現在給与なぜ現在の金額なのか
次の給与何ができれば上がるのか
評価項目3〜5項目程度に絞れているか
一人当たり粗利前月・前年から増えているか
退職人数採用人数と一緒に確認しているか
1年後定着人数入社した人が何人残ったか
属人業務その人しかできない仕事がないか
教育初日・1週間・1か月・3か月の内容が決まっているか

給与を上げることだけを考えるのではなく、「この給与を払い続けられる会社をどうつくるか」まで同時に考えることが必要になります。

人件費が上がり、人手不足まで続くと、新しい設備やAIによって仕事を減らしたくなりますが、ここで「便利そう」「同業他社も使っている」「支援制度を利用できる」といった理由から先に入ってしまうと、人件費を吸収するための投資だったはずが、新しい月額料金や保守費を増やしただけで終わることがあります。

投資を考えるとき、最初に見るのは価格ではありません。

現在の作業時間です。

ある工程へ社員2人が合計一日4時間使い、月20日働いているなら月80時間、年間では960時間になります。

300万円の設備を導入することで月20時間まで減るなら、月60時間、年間720時間が戻ります。

一時間3,000円相当なら216万円分の社員時間ですが、ここでも「年間216万円の経費が消える」と考えてはいけません。

社員をそのまま雇用するのであれば給与は残ります。

重要なのは、その720時間を何へ移すかです。

たとえば人手不足によって、一件当たり粗利2万円の注文を毎月20件断っている会社なら、受けられていない粗利は月40万円、年間480万円になります。

設備を入れて720時間戻ることで、その注文を受けられるようになるのであれば、300万円を払って年間480万円の追加粗利を取りに行く投資として考えられるため、単なる「省力化設備」ではなく、会社の受注能力を増やす設備になります。

反対に設備を入れて720時間戻っても、追加受注はなく、残業も減らず、社員が空いた時間を別の不要な仕事へ使うのであれば、300万円を投じた効果はかなり小さくなります。

だから、購入前に時間の使い道まで決めます。

AIについても同じです。

社員全員へ一斉に導入する必要はありません。

5日間の業務調査で見つかった仕事のうち、毎月20時間以上使っており、同じような作業を繰り返し、人間が最後に確認できる仕事を二つか三つ選び、現在時間を記録してから試します。

定型メールを一件20分、月100件作っているなら月約33時間ですが、利用後に一件12分まで短縮できれば一件8分、月800分、年間では約160時間が戻ります。

利用料金と確認時間を含めても効果が残るなら続けます。

20分が18分にしかならないのであれば、その仕事には合っていないのかもしれません。

別の仕事で試します。

「せっかく契約したから使う」という判断はしません。

設備もシステムもAIも、導入前と導入後の数字を比べて初めて評価できます。

また、顧客情報、個人情報、未公開の契約情報、社外秘資料などを扱う場合には、どこまで利用できるのかをサービス条件と自社ルールの双方から確認し、公開済み情報、入力してはいけない情報、外部へ出す前に担当者が確認する情報など、自社の仕事に合わせた基準を用意しておく必要があります。

公的支援を利用するときも、考える順番は同じです。

「300万円の設備へ支援があるから買う」のではありません。

現在年間960時間使っている。

設備で720時間戻せる。

その720時間によって追加受注を年間480万円分増やせる。

だから300万円の設備が必要であり、その投資へ利用できる制度がないか調べる。

この順番です。

設備導入から3か月たったら、もう一度時間を測ります。

予定では月60時間減るはずだったのに30時間しか減っていないのであれば、設備そのものだけを疑うのではなく、操作方法、社員教育、導入前の仕事の流れが残っていないかを確認し、反対に80時間減っているのであれば、なぜ予定より効果が出たのかを調べて別工程へ展開します。

投資前に必ず埋めたい項目

  • 現在、この仕事に年間何時間使っているか
  • 導入後、年間何時間まで減る見込みか
  • 年間何時間戻るのか
  • 戻った時間を何の仕事へ使うのか
  • その仕事から年間いくら粗利を増やせるのか
  • 初期費用はいくらか
  • 年間保守費・利用料はいくらか
  • 何年で投資額を回収できる見込みか
  • 導入3か月後に何を測定するのか

設備会社へ聞く質問も、「一番人気の商品はどれですか」ではなく、「当社はこの工程へ年間960時間使っていますが、この設備を入れた場合、何時間まで減らせる想定ですか」へ変わります。

自社の数字を持っている会社は、売り手の説明を聞くだけではなく、自社に必要かどうかを自分たちで判断できます。

ここまで進めれば、経営者の手元には年間人件費増加額、商品一件ごとの利益、社員が使っている時間、給与と評価の課題、設備やAIへ投資した場合の回収見込みがそろっているため、これ以上新しい経営手法を探し回るのではなく、一度90日間で実行して数字を確認します。

年間240万円増える会社なら、月20万円。

これをA4用紙一枚の一番上へ書きます。

その下へ、価格8万円、低採算商品の改善5万円、仕事時間3万円、新規受注・追加サービス4万円と書けば、90日間の目的はかなり明確になります。

最初の1~7日で給与台帳と勤怠記録を確認し、年間人件費増加額を確定すると同時に、過去12か月の商品別売上、直接費用、作業時間を集め、売れているのに利益が残らない商品を見つけます。

8~14日では、その商品について価格を変更するのか、作業工程を短縮するのか、無料対応を有料化するのか、販売自体をやめるのかを決め、価格を変更するのであれば適用日、既存顧客への説明、既存契約をどう扱うかまで決めます。

15~30日では5日間の業務調査を行い、会議を短くする、利用されていない資料を廃止する、見積書を共通化する、二重入力をなくす、同じ問い合わせを減らすなど、お金をほとんど使わずに直せる仕事から手を付けます。

ここまでは、なるべく大きな投資をしません。

31~45日になって、それでも残った繰り返し業務についてAIや現在利用しているシステムを試し、導入前と導入後で月何時間変わったのかを確認します。

46~60日では社員面談を行い、給与、評価、仕事量、教育、属人化している仕事、退職につながりそうな問題を確認し、何ができれば次の給与へ進めるのかを職種ごとに整理します。

61~75日になって、それでも人が足りないのであれば採用を検討し、それでも時間が足りない工程について設備投資を検討します。

順番が重要です。

不要な仕事を残したまま人を採らない。

不要な仕事を残したまま機械を買わない。

75日間調べて、それでも必要なものへお金を使います。

76~90日では、初日に決めた月20万円と実績を比べます。

価格改定は8万円目標に対して7万円。

低採算商品の改善は5万円目標に対して6万円。

仕事時間の改善は3万円目標に対して2万円。

追加サービスは4万円。

合計19万円です。

90日前、会社が見ていた数字は年間240万円でした。

90日後は違います。

あと月1万円です。

月100件販売する商品なら一件100円。

5,000円の追加サービスなら月2件。

一件1万円の仕事なら月1件。

ここまで問題を小さくできれば、経営者も現場も「では、何をすればいいのか」を考えられます。

反対に月25万円改善できたのであれば、必要額を5万円上回っていますから、その5万円をすべて使うのではなく、社員教育へ2万円、設備更新の積立へ2万円、予備資金へ1万円というように次の改善へ残せば、人件費増加を吸収しただけでなく、以前より会社の体力を強くできます。

毎月見る数字も増やしすぎる必要はありません。

粗利、人件費、総労働時間、一人当たり粗利、現預金残高。

この五つを同じ日に確認します。

売上1,000万円、粗利400万円、人件費250万円だった会社が、翌月に売上1,100万円、粗利380万円、人件費270万円になったのであれば、売上は100万円増えていても会社の状態は改善していません。

なぜ粗利が20万円減ったのか。

なぜ人件費が20万円増えたのか。

利益の薄い商品の販売が増えたのであれば商品を直し、値引きが増えたのであれば値引き承認の方法を変え、残業が増えたのであれば5日間調査へ戻って仕事時間を調べます。

原因を一つ見つけたら、翌月に行うことを一つ決めます。

それを繰り返します。

一人当たり粗利も、社員10人で500万円なら50万円、同じ10人で550万円なら55万円ですから、増えた5万円が価格変更から生まれたのか、仕事時間の改善から生まれたのか、社員教育から生まれたのかを調べ、効果があった方法を別の商品や部署へ広げます。

90日後には最初のA4用紙へ、目標20万円、実績19万円、不足1万円、最も効果があった施策、効果がなかった施策、次の90日で行うことを書き込みます。

これで次にやることが決まります。

90日間の実行表

期間経営者が行うこと完了時に残す数字
1~7日給与・人件費を計算年間増加額
8~14日商品採算・価格を確認月間改善予定額
15~30日5日間の仕事調査年間削減可能時間
31~45日AI・既存システムを試す導入前後の時間差
46~60日社員面談・評価整理次の給与条件
61~75日採用・設備の必要性を判断年間費用・回収期間
76~90日全施策を検証月間実績改善額

90日間で月20万円必要だった会社が19万円まで改善できたのであれば、経営会議で話すべきことは、もう「人件費高騰への対応」ではありません。

「残り1万円をどこからつくるか」です。

この大きさまで問題を小さくできれば、会社は動けます。

最低賃金が上がったときに最初から値上げ、人員削減、設備投資を考えるのではなく、給与台帳と勤怠記録を開き、給与体系全体を調整した結果として年間人件費が実際にいくら増えるのかを計算するところから始めれば、会社が対応しなければならない問題の大きさが初めて見えるようになります。

年間240万円なら、月20万円です。

その20万円を商品、価格、仕事時間、人材、追加受注へ分け、商品については「売上」ではなく一件売った後に残る利益を確認し、社員については「忙しい」という感覚ではなく5日間の記録から年間何時間を使っているのかを調べれば、会社の中で利益を失っている場所が具体的に見えてきます。

人を採用するのは不要な仕事を減らした後、設備を買うのは現在の作業時間と導入後の作業時間を比較した後、給与を上げるのであれば何ができるようになれば次の給与へ進めるのかを決めた後というように、会社がお金を使う順番を整理するだけでも、同じ人件費増加に対する経営判断はかなり変わります。

そして90日後、月20万円必要だった改善額が19万円まで届いたのであれば、年間240万円という大きな問題をもう考える必要はなく、経営者が考えるのは残り月1万円をどの商品、どの仕事、どの追加サービスから生み出すかというところまで小さくなっています。

経営者が明日最初にやることは、難しいことではありません。

給与台帳を開き、今回の賃金上昇で「年間いくら増えるのか」を計算してください。

そこから12で割ってください。

その数字が、この90日間で会社が取り戻すべき金額です。

大きな経営課題を大きなまま解決しようとせず、年間を月へ、月を商品一個へ、社員の一日を一時間へ、一時間を10分へと小さくしていけば、「結局、何をすればいいのか分からない」という状態から抜け出し、会社のどこを直せば利益が戻るのかを数字で判断できるようになります。


最低賃金が上がったら
経営者は何をすればいい?
やるべきことは、単純な経費削減ではありません。 増える人件費を正確に計算し、その金額を商品・仕事時間・人材・投資の 4方向から取り戻せる会社へ変えていくことです。
経営者が最初にやること 「年間いくら人件費が増えるのか」を計算し、
12で割って「毎月取り戻す金額」を決める。
1

全社員の人件費増加額を計算する

給与台帳と勤怠記録を確認し、最低賃金に近い社員だけではなく、 既存社員との給与差まで含めて、会社全体で年間いくら人件費が 増えるのかを確定します。

2

年間増加額を12で割る

年間240万円増えるのであれば、会社が解決しなければならないのは 「240万円」ではなく「毎月20万円」です。 ここまで数字を小さくしてから対策を考えます。

3

全商品・サービスの「本当の利益」を調べる

売上額だけを見るのではなく、仕入れ、外注、直接費用、 さらに社員が使った時間まで含め、一件販売したときに 会社へ実際にいくら残っているのかを確認します。

4

社員全員の仕事を5日間だけ測る

会議、日報、入力、見積もり、ファイル検索、問い合わせ対応などを 30分単位程度で記録し、年間100時間以上使っている仕事から 廃止・短縮・共通化・自動化できないかを確認します。

5

採用する前に「本当に人が必要か」を確認する

年間500時間程度の不要な仕事を減らした後でも人手が足りないのかを 確認し、それでも不足する場合に採用を検討します。 「忙しいから採る」ではなく、「必要な仕事が残ったから採る」へ変えます。

6

給与を上げる条件を社員へ示す

現在25万円の社員が27万円になるためには何ができればよいのかを決め、 給与・能力・担当業務・会社へ残す利益を結び付けます。 採用人数だけではなく、一年後に何人残っているかまで確認します。

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AI・設備は「何時間戻るか」で判断する

導入価格だけを見るのではなく、現在年間何時間使っている仕事が 導入後に何時間まで減り、戻った時間から何円の粗利を 生み出せるのかを計算してから投資します。

たとえば年間240万円、人件費が増える会社なら
年間人件費増加額 240万円
1か月で取り戻す金額 20万円
価格の見直し +8万円
低採算商品の改善 +5万円
仕事時間の改善 +3万円
追加サービス・新規受注 +4万円
改善額合計 20万円
経営者が実行する「90日間」
1~7日
給与台帳を確認し、年間人件費の増加額を確定する。
8~14日
商品別の利益を調べ、値上げ・工程短縮・有料化・販売終了を判断する。
15~30日
社員の仕事を5日間測り、会議・入力・検索・見積もりなどの不要時間を減らす。
31~45日
残った繰り返し業務だけにAIや既存システムを試し、時間差を測定する。
46~60日
社員面談を行い、給与・評価・教育・退職につながる問題を確認する。
61~75日
ここまで改善しても不足する場合だけ、採用や設備投資を判断する。
76~90日
最初の目標額と実際の改善額を比較し、「あと何円必要なのか」を確定する。
90日後に目指す状態
「年間240万円も増える」

「あと月1万円改善すればいい」

大きな経営課題をそのまま抱えるのではなく、 年間を月へ、月を商品一個へ、仕事を一時間へと分解し、 経営者が具体的に動ける数字まで小さくすることが、 この90日間で行う経営改善の中心です。



CBS│企業ブランディング支援TM
人件費が上がる時代だからこそ、
「利益が残る会社の仕組み」 を見直しませんか?

最低賃金が上がれば、会社が負担する人件費も増えていきます。 しかし、そこで経費削減や採用抑制だけを考えてしまうと、 本当に改善すべき商品・価格・仕事時間・人材の問題が そのまま残ってしまう可能性があります。

この記事でお伝えしたかったのは、 人件費の増加を漠然とした不安として抱えるのではなく、 「年間でいくら増えるのか」「毎月いくら取り戻せばよいのか」 まで数字を小さくして、経営者が実際に動ける課題へ 変えていくことです。

たとえば年間240万円の負担増であれば、 月単位では20万円です。 商品価格、低採算商品の改善、仕事時間の短縮、 新しい受注などを組み合わせれば、 「年間240万円」という大きな数字を、 一つずつ改善できる経営課題へ分解できます。

この記事から経営者にお伝えしたいこと 給与を上げても会社に利益が残る。
その仕組みをつくることが、 これからの経営には必要です。
1
数字を知る
人件費が年間いくら増えるのかを計算し、 毎月必要となる改善額まで明確にします。
2
利益を見直す
商品・価格・仕事時間・採用・業務工程を確認し、 利益を失っている場所を探します。
3
90日で動く
一度に会社全体を変えようとせず、 90日間で優先順位を決めて改善を進めます。

売上は伸びているのに利益が残らない。 社員は忙しく働いているのに生産性が上がらない。 給与を上げたいけれど、その原資をどこから生み出せばよいのか分からない。 こうした悩みを抱える中小企業は少なくありません。

問題を解決するためには、 「もっと売る」だけではなく、 何を売るのか、いくらで売るのか、 その仕事に何時間使っているのか、 その結果として会社にいくら残っているのか まで見直す必要があります。

このような経営課題を感じていませんか?
  • 人件費の上昇を見据えて、会社の収益構造を見直したい
  • 売上はあるのに、思ったほど会社に利益が残っていない
  • 値上げしたいが、どの商品から見直せばよいのか分からない
  • 社員が忙しく、仕事時間を減らす方法を探している
  • 給与を上げながら、社員が長く働ける会社をつくりたい
  • 自社の商品・サービス・会社の強みをもっと分かりやすく伝えたい
  • 今後の会社の方向性を、一度整理して考えてみたい
CBS│企業ブランディング支援™では、 会社が持っている商品やサービスの魅力を伝えるだけではなく、 「なぜお客様から選ばれるのか」 「どこで利益を生み出していくのか」 「これからどのような会社を目指すのか」 という視点から、企業が抱えている課題を整理していきます。

人件費、採用、商品、価格、情報発信などは、 一見すると別々の問題に見えるかもしれません。 しかし会社全体を見渡してみると、 一つの問題を改善することが、 別の課題を解決するきっかけになることもあります。

「何から手を付ければよいのか分からない」という段階でも構いません。 現在の状況を一つずつ整理し、 会社のこれからを考えるところから始めてみませんか?
会社のこれからについて、
CBS│企業ブランディング支援™へご相談ください。
お問い合わせ内容を確認のうえ、 ご相談内容に応じて対応いたします。

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