
「値上げしたら、お客様が離れてしまうのではないか」
原材料費や人件費が上がる中、こんな不安を抱える企業は少なくありません。
しかし、同じ10%の値上げでも、納得される会社と不信感を持たれる会社があります。
その差は価格ではなく、値上げまでに積み重ねてきた「信頼」にあります。

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「値上げ=お客様が離れる」と思っていませんか?
でも、本当に見直すべきなのは、価格そのものではなく、その金額を払ってでも選びたい理由が会社にあるかどうかかもしれません。
例えば、同じ10%の値上げでも、「諸般の事情により」とだけ伝える会社と、コスト上昇の数字や守りたい品質まで説明する会社では、受け取る印象がまるで違います。実際に中小企業庁も、数字を示した説明とブランド価値の訴求によって、5年間で50%の価格転嫁を進めた企業事例を紹介しています。
今回は値上げの方法だけではなく、「自社は価格以外の何で選ばれているのか?」という視点から、企業ブランディングを一緒に見直していきます。
値上げしても顧客が離れない会社とは?価格改定で分かる企業ブランドの本当の強さ
例えば、これまで1万円で提供していたサービスを、来月から1万1,000円へ変更するとします。
企業側から見れば「たった1,000円の値上げ」でも、お客様から見れば10%の価格改定です。
ここでホームページに、
「諸般の事情により、料金を改定させていただきます」
とだけ掲載したら、どう感じるでしょうか。
間違った文章ではありません。
けれど、お客様が本当に知りたい「なぜ1,000円上がるのか」が何も分からないのです。
原材料が上がったのか。
人件費が増えたのか。
サービス内容が良くなるのか。
それとも、単純に会社の利益を増やしたいだけなのか。
説明がなければ、その空白をお客様自身が想像することになります。
そして、その想像が企業にとって都合のいい方向へ進むとは限りません。
2026年の価格転嫁率は54.2%|値上げできない会社もまだ多い
中小企業庁が2026年6月26日に公表した「価格交渉促進月間」の調査を見ると、企業が置かれている状況がよく分かります。
2026年3月時点の価格転嫁率は54.2%でした。
前回より約1ポイント改善したものの、コスト上昇分のすべてを販売価格へ反映できているわけではありません。
内訳を見ると、原材料費の転嫁率は55.7%。
労務費は50.0%、エネルギーコストは48.9%です。
調査対象は30万社で、6万9,625社が回答しています。
「うちだけ値上げで悩んでいる」と感じている経営者もいるかもしれませんが、数字を見ると決して特殊な悩みではありません。
むしろ問題は、値上げするか、しないかの二択だけで考えてしまうことです。
価格を据え置けば、お客様には喜ばれます。
その一方で、利益が削られ続ければ、設備更新を延期したり、採用を控えたり、従業員の賃金を上げられなくなったりすることがあります。
サービス品質を守るための費用まで削れば、やがて「以前より対応が悪くなった」という別の不満につながります。
つまり、値上げしないことが必ずしも顧客思いとは限らないのです。
「1万円→1万1,000円」でも伝え方によって印象は大きく変わる
ここで、A社とB社という2つの会社を想像してください。
どちらも同じサービスを1万円から1万1,000円へ値上げします。
A社のお知らせはこうです。
「原材料費等の高騰に伴い、9月1日より料金を改定いたします。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます」
よく見る価格改定のお知らせです。
ではB社はどうでしょう。
「これまで価格を維持してまいりましたが、主要材料の仕入れ価格が3年間で約18%上昇しました。品質を落として現在の価格を維持する方法も検討しましたが、それは私たちが提供したいサービスではありません。9月1日から料金を10%改定し、現在の品質とサポート体制を維持します」
値上げ幅は同じです。
それでも受け取る印象はかなり違いませんか。
B社は「値上げします」ではなく、なぜ値上げするのか、何を守るためなのかまで説明しています。
ここに企業ブランディングが表れます。
ブランドというと、ロゴ、会社案内、広告、ホームページのデザインなどを想像しがちです。
しかし、お客様が企業を評価するのは格好いい広告を見た瞬間だけではありません。
トラブルが起きたとき。
納期が遅れたとき。
問い合わせをしたとき。
そして、価格が上がったとき。
企業にとって都合の悪い場面でどんな説明をするのかも、その会社のブランドをつくっています。
値上げ理由を「原材料高騰」で終わらせない
値上げのお知らせを何社も見ていると、「原材料費や物流費の高騰」という表現をよく見かけます。
もちろん事実なら書くべきです。
ただ、それだけでは自社ならではの説明にはなりません。
例えば町のクリーニング店なら、
「洗剤や包装資材の仕入れ価格が上がりました」
だけではなく、
「価格維持のため仕上げ工程を簡略化する案も検討しましたが、現在の品質を維持するため料金を200円改定します」
まで書く。
Web制作会社なら、
「人件費上昇のため月額料金を改定します」
ではなく、
「担当者一人あたりの案件数を増やして価格を維持する方法ではなく、現在の担当体制を守ることを選びました」
と説明できます。
旅館なら、
「食材価格高騰のため宿泊料金を改定します」
だけで終わらせず、
「料理の品数や地元食材の使用量を減らして価格を維持するのではなく、現在のおもてなしを続けるための改定です」
と伝えられます。
この一文があるだけで、「会社都合の値上げ」から「価値を守るための価格改定」へ見え方が変わります。
もちろん、説明すればすべてのお客様が納得するわけではありません。
価格を最優先する顧客が離れる可能性もあります。
だから値上げを美談にするのも違います。
大切なのは、価格が上がった事実をごまかさず、それでも自社が守りたい価値を言葉にすることです。
実際に「5年間で50%」価格転嫁した企業もある
ここで興味深い実例があります。
中小企業庁の適正取引支援サイトでは、2026年3月31日にブランド卵を生産・販売する企業の事例を紹介しています。
この会社では、原価の5〜6割を占める餌の価格が、10年前と比べて約2倍まで上昇しました。
そこで一度に大幅な値上げをするのではなく、5年間をかけて段階的に50%の価格転嫁を実施しています。
特徴的なのは、ただ価格を上げたわけではないことです。
需要期に合わせて年1回の改定とし、1か月前に告知。
さらに原価率を数字で説明し、自社商品のブランド価値についても取引先や消費者へ伝えています。
「高くなりました。ご了承ください」ではありません。
数字+理由+価値+告知期間を組み合わせています。
ここには中小企業でも取り入れられるヒントがあります。
値上げを発表する日だけ頑張るのではなく、普段から「なぜこの商品にこの価格が付いているのか」を伝えておくのです。
値上げを企業ブランディングにつなげる方法|価格ではなく「選ばれる理由」を伝える
値上げを検討するとき、経営者が一番気にする数字は「いくら上げるか」だと思います。
5%なら大丈夫か。
10%では高すぎるか。
500円なら受け入れてもらえるか。
もちろん価格設定は大切です。
ただ、その前に一度ホームページをお客様の立場で見てください。
「値上げ後も、この会社を選ぶ理由が書いてあるだろうか」
ここが意外と抜けています。
値上げ前にホームページの「選ばれる理由」を点検する
例えば、月額3万円で企業向け清掃サービスを提供している会社があるとします。
ホームページには、
「丁寧に清掃します」
「安心価格です」
「経験豊富なスタッフが対応します」
と書いてある。
悪くはありません。
しかし、3万円が3万3,000円になった瞬間、お客様は他社との比較を始めます。
そこで競合会社が月額2万8,000円だったらどうでしょう。
「丁寧」「安心」「経験豊富」だけでは、5,000円高い理由を説明できません。
そこで具体化します。
例えば、
「年間契約継続率94%」
「作業後24時間以内の再対応無料」
「担当スタッフの変更は原則なし」
「月1回の清掃報告書を写真付きで提出」
「2025年度クレーム発生率0.8%」
ここまで書かれていれば、比較する材料が増えます。
価格だけを見れば5,000円高い。
しかし担当者からすれば、
「報告書を社内で作らなくていい」
「問題があれば翌日対応してもらえる」
「毎回担当者が変わらない」
という別の価値が見えてきます。
これが価格競争から価値比較へ移すということです。
値上げの30日前から「説明」を始める
価格改定当日にホームページへお知らせを掲載して終わり、という会社もあります。
これでは既存顧客からすると突然です。
可能であれば、価格改定は「点」ではなく「期間」で設計します。
例えば10月1日に価格を改定するなら、
8月下旬
社内で値上げ理由、対象商品、既存契約の扱い、問い合わせ回答を統一する。
9月1日
既存顧客へ個別に案内し、ホームページにも価格改定のお知らせを掲載する。
9月上旬〜中旬
営業担当者が主要取引先へ理由を説明する。
9月中
FAQへ「なぜ価格が変わるのですか」「既存契約はどうなりますか」などを追加する。
10月1日
新価格へ切り替える。
このようにすると、顧客側にも考える時間が生まれます。
BtoB企業なら特に、取引先の担当者自身が社内で値上げを説明しなければならない場合があります。
「御社が10%上げるのは分かりました。でも、私は上司に何と説明すればいいのですか」
ここまで想像できる会社は強いです。
価格改定資料に、
「原材料費+12%」
「物流費+8%」
「人件費+6%」
など、自社で開示できる根拠を整理しておけば、取引先担当者も社内説明に使えます。
値上げ交渉は、自社が相手を説得するだけの場ではありません。
相手がその先の誰かへ説明できる材料を渡す場でもあるのです。
価格改定後に見るべき数字は「解約数」だけではない
値上げすると、多くの会社が売上と解約件数を確認します。
もちろん確認すべき数字です。
ただ、それだけでは今回の価格改定がブランドへ与えた影響までは分かりません。
例えば、改定前後3か月で以下を比較します。
- 解約率
- 問い合わせ件数
- 値上げを理由とした解約件数
- 新規契約率
- 顧客単価
- 粗利益率
- クレーム件数
- 既存顧客の継続率
仮に顧客が100社あり、10%値上げした結果、3社が解約したとします。
「3社も失った」と見ることもできます。
一方、97社が新価格でも継続し、利益率が改善したのであれば、従業員の待遇改善や設備投資、サービス品質向上へ回せる可能性があります。
反対に、値上げ後に20社が離れたのであれば、「お客様が価格以上の価値を感じていなかった」という厳しい結果かもしれません。
そこで値下げだけを考えるのではなく、
なぜ選ばれていなかったのか。
ここを調べます。
価格なのか。
対応速度なのか。
品質なのか。
他社との違いが伝わっていなかったのか。
ホームページを見ても実績が分からなかったのか。
値上げは、ときに自社ブランドの弱点を映す鏡になります。
怖い数字ではありますが、改善点を見つける材料にもなるのです。
「安い会社」から「理由があってこの価格の会社」へ変える
価格競争には一つ大きな弱点があります。
自社より安い会社が現れた瞬間、それまでの強みが消えてしまうことです。
9,800円だから選ばれていた会社の隣に、同じようなサービスを8,800円で提供する会社が現れれば、1,000円差を説明しなければなりません。
そのとき、
「昔からこの価格だから」
では弱い。
だからこそ日頃から、
誰が対応しているのか。
どんな工程を踏んでいるのか。
品質をどう確認しているのか。
問題が起きたらどう対応するのか。
どんな企業から選ばれているのか。
何年間続けて利用されているのか。
こうした情報をホームページや営業資料で見せていきます。
値上げの直前になってブランドを作るのではありません。
普段から価値を見せている会社だからこそ、価格を変えるときにも説明が通りやすくなる。
企業ブランディングは、華やかな広告を作る作業だけではありません。
「この会社なら、この金額でも頼みたい」。
そう思ってもらえる理由を、一つずつ積み上げていく経営そのものなのです。
まとめ|値上げは「価格のお知らせ」ではなく会社の姿勢を伝える機会になる
値上げをすれば、すべてのお客様が喜んで受け入れてくれるわけではありません。
価格を理由に離れる顧客もいますし、説明しても納得してもらえないケースもあります。
それでも、利益を削りながら安さだけを守り続ければ、サービス品質や従業員の待遇、設備投資にしわ寄せが来ることがあります。
2026年3月時点でも中小企業の価格転嫁率は54.2%にとどまっています。
だからこそ「いくら上げるか」だけでなく、「なぜこの価格なのか」を説明できる会社づくりが問われています。
自社のホームページを開き、価格表をいったん見ないでください。
それでも「この会社を選びたい理由」が3つ見つかるでしょうか。
見つからなければ、そこが今日から始められる企業ブランディングの改善点です。
「価格以外で選ばれる理由」をつくりませんか?
「値上げしたいけれど、お客様が離れそうで怖い」
「競合より高くすると、問い合わせが減るのではないか」
「うちの会社に、価格以外の強みなんてあるのだろうか」
そんな悩みを抱えている企業様は、 決して少なくありません。
ただ、本当に見直したいのは 「いくらで売るか」だけではありません。
例えば競合が10万円、自社が12万円だったとしても、 実績、対応力、品質管理、アフターフォロー、 担当者の専門性まできちんと伝わっていれば、 お客様の比較軸は「2万円の差」だけではなくなります。
反対に、ホームページを見ても 「高品質」「安心」「丁寧」「豊富な実績」としか 書かれていなければ、価格で比較されやすくなります。
価格表を見なくても、
「この会社を選びたい理由」が3つ見つかりますか?
もしすぐに見つからなければ、 そこにはまだ伝え切れていない 「御社ならではの価値」が眠っているかもしれません。
企業ブランディング支援では、 見た目をきれいにするだけのブランディングではなく、 「なぜ御社が選ばれるのか」を言葉と情報で見える形にすること を大切にしています。

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