
地元を応援したい――会社を経営していると、自分たちの商品を買ってくれる人、働いてくれる人、長く取引してくれる会社、そして事業を続ける場所そのものに対して、「会社として何か返せないだろうか」と考える瞬間があります。
ところが、いざ行動しようとすると難しいもので、寄附をするのか、地域イベントへ協賛するのか、地元の商品を買うのか、それとも雇用を増やすのか、「会社として地域を応援するとは、具体的に何をすればいいのでしょうか」という疑問にぶつかります。
企業にできる地域貢献は、もっと広く考えることができます。地域企業への発注、地域人材の雇用、設備投資、人材育成、地域資源の商品化、企業同士の共同開発、自治体との官民連携、地域DX、企業版ふるさと納税など、普段の経営活動そのものを地域へ向ける方法があるからです。
そして会社には、個人にはない「資金」「人材」「設備」「技術」「信用」「取引網」「販売力」という経営資源があります。これらを地域の中で動かし、さらに地域外から売上を持ち帰る仕組みまでつくることができれば、地域貢献は一時的な善意ではなく、会社と地域が一緒に成長する事業へ変わります。
では、自社には何ができるのでしょうか。
ここでわかること

「地元に貢献したい」「会社として、地域のために何かできないだろうか」――そんな思いを持っている会社経営者の方を、CBS│企業ブランディング支援™は応援します。地域への貢献は、寄附やイベントへの協賛だけではありません。地域企業へ仕事を発注すること、地元で人を雇い育てること、地域の企業と新しい商品をつくること、そして自社の技術やサービスを地域の課題解決に生かすことも、立派な地域貢献です。「でも、具体的に何から始めればいいのだろう?」この記事では、そんな疑問を持つ経営者の方に向けて、企業だからこそできる地域貢献の方法を、地域経済・雇用・取引・公的支援制度・企業ブランディングという視点から具体的に紹介しています。地元を応援しながら、会社も成長していく。その両方を実現するために、自社だからできることを一緒に探してみませんか。
CBS│企業ブランディング支援™では、制度や支援策を紹介するだけではなく、
「実際に会社では何ができるのか」
「何から始めればいいのか」
という経営者の視点に立ち、地域への思いを具体的な行動へつなげる方法まで詳しく考えていきます。
地元を応援したいという思いを、会社だからこそできる地域貢献へ変えていくために・・・。
では、早速見ていきましょう。最後までぜひご覧ください。
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地元を応援するとは、地域の中で「お金・仕事・人」を循環させること
「地域貢献」という言葉から、寄附やボランティア活動、地域行事への協賛を思い浮かべる経営者は少なくありませんが、会社が地域へ与えている経済的な影響を考えるのであれば、最初に確認したいのは社会貢献活動の予算ではなく、実は毎年の仕入れや外注費です。
会社は事業を続けるだけで、原材料、部品、備品、物流、清掃、設備保守、システム、Web制作、広告、研修、士業、建設、宿泊、保険など、多数の企業へ毎年かなりの金額を支払っており、この「普段使っているお金」をどこへ支払っているのかによって、地域経済との関わり方は大きく変わります。
そこで一度、過去12か月の会計データを開いてみてください。
仮に年間売上3億円の製造会社があり、原材料、外注、物流、設備保守、広告、システムなどを合わせて年間1億5,000万円を外部へ支払っているとすれば、その1億5,000万円のうち地域企業へ支払われている金額はいくらなのか、経営者自身が把握しているでしょうか。
把握できていなければ、仕入先・外注先を「地域内」「地域外」「地域内への変更が難しい」「地域企業への変更を検討できる」という4区分程度に整理し、会社から毎年どの方向へ資金が流れているのかを可視化するところから始めます。
CBSでは、この記事の中でこの作業を便宜的に「地域調達監査」と呼びます。
たとえばWeb制作費200万円、印刷費150万円、清掃費120万円、設備保守費300万円、研修費100万円、出張時の宿泊費80万円、物流関連費500万円を地域外の企業へ支払っているのであれば、すべてを変更する必要はなくても、その中に地域企業が十分代替できる仕事がないかを調べます。
仮に年間300万円分だけでも新たに地域企業へ発注でき、その取引が5年間続けば、単純な発注額だけでも1,500万円となり、受注企業はそこから従業員への給与、材料購入、設備投資、別企業への外注などを行うため、最初の300万円から次の経済活動が生まれる可能性があります。
ここが、単発の寄附と通常取引との大きな違いです。
寄附には寄附の価値がありますが、企業間取引は双方に事業上の必要性がある限り翌年も続く可能性があり、地域企業が受注によって成長すれば雇用を増やしたり、新しい設備を購入したり、さらに別の地域企業へ仕事を発注したりする余地が生まれます。
ただし、「地元を応援したいのだから、多少条件が悪くても地元企業へ発注すべきだ」という考え方には注意が必要で、地域貢献を理由として通常の購買管理やリスク管理まで緩めてしまえば、自社の競争力そのものを傷つける可能性があります。
価格、品質、納期、技術力、供給能力、情報セキュリティ、コンプライアンス、財務状態、BCP、災害時の代替供給能力など、通常の取引で確認する基準はそのまま維持し、その条件を満たせる地域企業がないかを探すのが経営としての地域内調達です。
さらに一歩進める会社なら、「現在は取引条件を満たしていないから終わり」と判断するのではなく、地域企業と一緒に改善できないかを考える方法もあります。
たとえば製造会社なら発注仕様や品質基準を共有し、小規模な試験発注から始めることで取引先候補を育成できますし、大きな仕事を一括発注していた会社なら業務を分解することで、小規模な地域事業者でも受注できる仕事が見つかるかもしれません。
地域のIT会社へ自社システムの一部を任せる、地域のデザイン会社へパッケージ制作を依頼する、地域の物流会社へ特定エリアだけ配送を任せるといった方法なら、最初から大規模な取引へ切り替えるよりリスクを抑えて検証できます。
こうして考えると、「地域を応援する会社」とは地域活動へ参加している会社だけではなく、普段の経営活動の中で地域企業へ仕事を生み出している会社でもあります。
国の地域経済政策にも、この考え方と重なる部分があります。
地域未来投資促進法は、地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域事業者へ相当の経済的効果を及ぼす「地域経済牽引事業」を促進する仕組みであり、都道府県・市町村が作成する基本計画を基礎として、事業者が地域経済牽引事業計画を作成し、承認を受ける制度が設けられています。
地域経済牽引事業では、単に地域で事業を行うだけではなく、地域の特性を生かすこと、高い付加価値を生み出すこと、さらに地域事業者への経済的効果を及ぼすことが考え方の中心に置かれています。
公式情報:経済産業省「地域未来投資促進法」
https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/chiikimiraitoushi.html
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ここから会社経営へ持ち帰れる考え方は、「地域貢献を活動回数だけで測らない」ということです。
年間何回地域イベントへ参加したかだけではなく、地域企業への発注額はいくらか、地域内調達率は何%か、地域で何人雇用しているか、地域企業との共同事業からいくら売上が生まれたか、地域外からどれだけ売上を獲得できたかまで測れば、自社が地域経済へ与えている影響を数字で確認できるようになります。
地元を応援したいと考えたとき、最初に特別な活動を探す必要はありません。
まず会社の取引先一覧を開き、年間数千万円、数億円と動いている普段のお金を眺めてみると、地域のために会社ができることが、すでにその中に隠れている場合があります。
会社が地域を応援する強力な方法の一つは、地域に「仕事」をつくること
地域へ100万円を一度寄附することと、地域で一人を雇用して毎年給与を支払い続けることは、どちらが優れているという話ではありませんが、地域経済へ継続的に所得を生み出すという視点では、企業が持つ「雇用する力」は非常に大きな意味を持ちます。
仮に地域から5人を採用し、一人あたり年間400万円の給与等を支払う会社であれば、単純計算では年間2,000万円規模の所得が生まれ、その雇用が長期間続けば、地域に残る経済的な影響も一度きりではなくなります。
しかし、ここで「地元の人を積極的に採用しましょう」と書くだけなら、経営記事としてはほとんど意味がありません。
実際の採用現場では、必要な職種の応募者が来ない、若手を採用しても定着しない、専門人材が見つからない、フルタイム勤務が難しい人を採用できる職務設計になっていないなど、会社側にも解決しなければならない課題があります。
そこで最初に見直したいのが「人」ではなく「仕事」です。
営業、経理、顧客対応、Web更新、SNS運用、データ入力、製造、検品、配送、マーケティングなど、社内の業務を一度分解し、それぞれについて「本当に週5日・1日8時間勤務の一人の正社員が担当しなければならない仕事なのか」を検証します。
たとえば従業員10人のIT会社で、エンジニアが顧客からの電話対応、資料作成、簡単なWeb更新、請求処理まで担当しているなら、その周辺業務を切り離すことで、短時間勤務を希望する地域人材へ新しい仕事をつくれる可能性があります。
一方、高度なマーケティングやAI導入など地域内だけでは採用が難しい仕事については、副業・兼業人材など外部の専門人材と連携し、その知識を既存社員へ移転する方法も考えられます。
地域雇用を増やすことは、「求人広告を増やすこと」と同じではありません。
新卒、中途、高齢者、子育て世代、障害のある人、副業・兼業人材、U・I・Jターン希望者など、それぞれが働ける仕事の形を会社側が設計できるかどうかによって、これまで採用対象にならなかった人が戦力になる場合があります。
そして採用後には「育成」という次の問題があります。
2026年度の人材開発支援助成金には7コースが設けられており、人材育成支援コースでは職務に関連する知識・技能を習得させる訓練などについて、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成対象となります。
「人への投資促進コース」ではデジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練などが対象となり、2026年4月には新規採用助成・職務代行助成が追加され、同年8月にも制度改正が行われています。
公式情報:厚生労働省「人材開発支援助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
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非正規雇用労働者の企業内キャリアアップを検討する場合には、キャリアアップ助成金も確認対象となります。
2026年度版が公開されており、正社員化や処遇改善に関係するコースのほか、短時間労働者労働時間延長支援コースも設けられているため、自社で対象となる取組を始める前に最新要件を確認する必要があります。
公式情報:厚生労働省「キャリアアップ助成金」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
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助成制度を利用するときに注意したいのは、「社員を研修へ行かせたから後で助成金を申請しよう」という順序では利用できない場合があることです。
計画届、対象訓練、対象労働者、実施時期、必要書類など制度ごとに条件が細かく定められており、2026年度中にも改正が行われているため、実施前に管轄労働局や公式資料で最新の支給要件を確認することが欠かせません。
地域雇用を本当の地域貢献へ育てるのであれば、さらに「何人雇ったか」だけではなく、「その人が地域に残って働き続けられる会社になっているか」まで考えたいところです。
若者を5人採用しても数年で全員が退職する会社より、専門技術、デジタル、マーケティング、経営管理などを学びながら長期間働ける会社が地域に存在する方が、人材という地域資源を長期的に育てることにつながります。
そこで地域採用人数と一緒に、3年定着率、研修時間、資格取得人数、平均賃金、管理職登用、育児後の復職状況なども経営指標として追ってみます。
「地域で人を採用する会社」から「地域で人を育てられる会社」へ変わることができれば、会社が地域に残すものは毎月の給与だけではなく、そこで働く人の技術、経験、キャリアへ広がっていきます。
補助金・支援制度を使って、地域で「新しい事業」をつくる
「何か使える補助金はありませんか」と支援機関へ相談する経営者は珍しくありませんが、地域活性化を事業として考えるのであれば、補助金を探すところから始めるのではなく、「自社は地域で何を実現したいのか」を先に決める方が事業計画として筋が通ります。
公式情報:中小企業基盤整備機構|2026年度 補助金スケジュール

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地域の農産物を使った新商品を開発したい、地域工場の技術を組み合わせて新製品をつくりたい、地域の観光事業者をまとめる予約システムを構築したい、人手不足を補う設備を導入したいといった具体的な事業が先にあり、その投資を実現する手段として補助制度を探します。
順序を逆にすると、「採択されるための事業」を考え始めてしまいます。
2026年度に中小企業庁が示している中小企業施策には、中小企業省力化投資補助金、小規模事業者持続化補助金、デジタル化・AI導入補助金、事業承継・M&A補助金、中小企業成長加速化補助金、新事業進出・ものづくり・商業・サービス関連の支援など、設備投資から販路開拓、事業承継まで複数の制度があります。
ただし、ここで制度名だけを見て「自社も使える」と判断してはいけません。
公募回によって対象者、補助対象経費、補助率、上限額、申請期間、賃上げ要件などが異なり、同じ制度でも年度途中に公募要領が更新される場合があるため、事業計画を作った段階で最新の公式情報へ戻る必要があります。
たとえば地域密着型ホテルが、近隣の生産者5軒と共同で朝食商品を開発し、宿泊客だけではなくECでも全国へ販売する事業を考えたとします。
必要な投資を「厨房設備」「冷凍・保管設備」「商品開発」「パッケージ」「EC」「物流」「広告」「従業員教育」まで分解すると、初めてどの支援制度を調べるべきなのかが具体的になり、補助対象にならない費用まで含めた総投資額も見えてきます。
ここで忘れてはいけないのが、補助金は事業費の全額を国が支払ってくれる制度ではないということです。
補助対象外経費、自己負担、資金繰り、入金時期、事業完了期限、実績報告などまで確認し、仮に補助金がなくても事業として成立するのか、採択されなかった場合には規模を縮小して実行できるのかまで検討しておけば、補助制度の採否だけに事業の命運を預けずに済みます。
より大きな地域投資を考える会社には、地域未来投資促進法という選択肢もあります。
これは単純な補助金ではなく、地域の特性を生かして高い付加価値を生み、地域の事業者に相当の経済的効果を及ぼす「地域経済牽引事業」を支援する仕組みで、都道府県知事の承認を受けた事業計画などについて、一定の要件を満たす場合には税制や金融等の支援措置につながる可能性があります。
公式情報:経済産業省「地域未来投資促進法」
https://www.meti.go.jp/policy/sme_chiiki/chiikimiraitoushi.html
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地域資源を活用した食品工場、観光関連施設、先端ものづくり拠点、物流施設、デジタル関連事業など、地域の強みを生かしながら大きな付加価値を生み出す投資を考えている会社なら、自社所在地の自治体がどのような基本計画を作成しているかを確認してみる価値があります。
さらに、補助制度の検索だけで終わらせず、商工会、商工会議所、地域金融機関、自治体の産業振興担当部署、よろず支援拠点などへ事業計画そのものを持ち込み、「この事業を地域で成立させるには何が不足しているか」を相談してみる方法もあります。
支援機関に聞くべき質問も、「使える補助金はありますか」だけではありません。
- 「この地域で同じ課題を抱えている企業はないか」
- 「共同事業者になりそうな企業はないか」
- 「自治体の産業政策と重なる部分はないか」
- 「地域金融機関から見て事業計画に無理はないか」
と聞けば、制度検索では見つからない企業や人との接点が生まれる場合があります。
地域活性化の主役は補助金ではありません。
会社が地域で新しい売上をつくり、雇用を生み、地域企業への発注を増やし、その利益を次の投資へ回す事業そのものが主役であり、補助金や税制、融資などの公的支援は、その事業を実現しやすくするための手段として位置づける方が健全です。
企業版ふるさと納税を「寄附して終わり」にしない
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会社として特定の地域を応援したい経営者なら、地方創生応援税制、いわゆる「企業版ふるさと納税」は一度確認しておきたい制度ですが、個人向けの仕組みとは制度設計が異なるため、「会社版の返礼品付き寄附」のように理解してはいけません。
企業版ふるさと納税は、地方公共団体が行う地方創生の取組に対して企業が寄附を行った場合、通常の損金算入による税負担軽減に加えて法人関係税の税額控除を受けられる仕組みで、対象となる地方創生事業は国の認定を受けた地域再生計画に位置づけられます。
2026年度についても制度は動いており、8月21日には企業版ふるさと納税の対象事業に関する2026年度第1回認定が公表されています。
公式情報:内閣府地方創生推進事務局「企業版ふるさと納税ポータルサイト」
https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/kigyou_furusato.html
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この制度を地域貢献として利用する場合、経営者が最初に考えたいのは「どの自治体へ寄附するか」ではありません。
先に、自社はどの地域課題を応援したい会社なのかを言葉にします。
たとえばIT会社なら、デジタル人材育成、教育DX、行政・地域DXなど自社の事業と接点のある分野が考えられ、建設会社なら防災、地域インフラ、空き家対策、まちづくり、食品会社なら農林水産業、地域産品開発、食育など、自社の技術や企業理念と地域課題が重なる場所を探します。
観光会社なら観光振興、文化、移住・定住、地域の魅力発信などが候補になりますし、製造会社であれば産業振興、技術人材育成、企業誘致、ものづくり基盤強化など、自社が日頃から向き合っている課題との接点を見つけやすいかもしれません。
企業版ふるさと納税の公式ポータルでは、地方公共団体が寄附を募集している事業を地域別・分野別に確認できます。
そのため、「有名な自治体だから寄附する」のではなく、自社の事業や理念と関連するプロジェクトを探し、自治体が何を実現しようとしているのかを確認したうえで寄附先を考える方が、社員や取引先にも活動の理由を説明しやすくなります。
企業版ふるさと納税には、人材派遣型という仕組みもあります。
2026年4月には人材派遣型のQ&Aが更新され、「副業タイプ」に関する資料も掲載されているため、地域との関係を資金だけで考えず、自社が持つ専門人材や知識を地域課題へ生かすという発想も検討できます。
地域側が不足しているのは、必ずしもお金だけではありません。
優れた農産物はあるが商品企画が弱い、観光資源はあるがデジタルで販売できない、地域企業にDXを進められる人がいない、若手職員へマーケティングを教えられる専門家がいないといった課題なら、企業が持つ人材やノウハウそのものが地域資源になります。
そして、ここからがCBSとして特に伝えたいところです。
企業版ふるさと納税を実施した翌日に、「当社は地域社会へ貢献しています」と大きく宣伝するだけでは、企業ブランディングとしては薄く、むしろ「なぜその地域なのか」「何を応援したのか」「その後どうなったのか」を継続して説明できる活動にする方が、会社の姿勢は伝わります。
寄附した事実だけでなく、翌年に対象事業の進捗を確認する、社員へ共有する、可能であれば地域を訪問する、関連する企業との取引や共同事業を検討するなど、一度の寄附から関係を広げることができれば、企業と地域の接点は少しずつ深くなります。
先にPRをつくらない。
先に活動し、関係をつくり、結果を確認して、その事実を正確に発信する。
「地域貢献をしているように見える会社」をつくるのではなく、実際に地域との関係を積み重ね、その履歴そのものが企業ブランドになっていく状態を目指す方が、CBSが考える企業ブランディングには合っています。
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地域の商品を「買う会社」から、地域の商品を「一緒につくる会社」へ
地域の商品を購入することは分かりやすい地域支援ですが、会社には購買者として地域を支えるだけでなく、自社の技術、販売網、デザイン、マーケティング、物流、IT、信用力などを地域資源と組み合わせ、新しい商品やサービスを生み出す役割もあります。
農林水産物、加工食品、ものづくり技術、伝統産業、自然、文化、観光資源など、地域の中では長年「普通のもの」として扱われてきた資源でも、別の業種から見ると新しい商品やサービスを生み出せる素材になっている場合があります。
たとえば、小規模な食品メーカーが高い加工技術を持っているものの、商品パッケージ、EC、物流、情報発信が弱く、販売先が地域内に限られているとします。
そこで地域のデザイン会社がパッケージを設計し、IT会社がECを構築し、物流会社が発送を担当し、ホテルが宿泊客へ商品を紹介する仕組みをつくれば、一社だけでは難しかった販路開拓を複数企業の経営資源によって実現できる可能性があります。
地域の製造会社でも同じです。
従業員30人の会社が高精度な金属加工技術を持っていても、長年特定企業の下請取引が中心で、自社商品を持っていないのであれば、地域のデザイン会社と一般消費者向け商品を開発し、EC会社と組んで全国販売するという事業展開も考えられます。
ここで目指したいのは、「地域企業だけでお金を回す」ことだけではありません。
地域内の企業が連携して商品をつくり、それを地域外へ販売して新しい売上を獲得し、その売上から地域の生産者、製造会社、物流会社、デザイン会社、従業員へ資金を戻すところまで設計できれば、地域外から地域内へお金を持ち込む仕組みになります。
仮に地域資源を使った商品が年間5,000万円売れ、そのうち4,000万円が地域外顧客からの売上であれば、その事業は地域内に存在していた需要を企業同士で取り合ったのではなく、地域外から新しい需要を獲得したことになります。
そして原材料1,000万円を地域生産者から仕入れ、加工を地域工場へ800万円発注し、物流を地域企業へ300万円発注し、新たに3人を雇用できたなら、「地域ブランドをつくった」という抽象的な言葉よりも、地域経済への影響をはるかに具体的に説明できます。
地域ブランドを育てる場合には、知的財産についても知っておく必要があります。
特許庁には地域団体商標制度があり、地域名と商品・サービス名などを組み合わせたブランドについて、一定の要件を満たした団体が商標登録を受けることができ、2026年5月29日時点でも最新の登録案件が公表されています。
公式情報:特許庁「地域団体商標登録案件一覧」
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/chidan/shoukai/ichiran/index.html
ただし、商標登録をすれば地域ブランドが完成するわけではありません。
どの地域で生産されたものを対象にするのか、品質基準をどうするのか、誰がブランド名を使えるのか、原材料や製法にどこまで共通ルールを設けるのか、粗悪な商品によって地域全体の信用が損なわれないよう誰が管理するのかなど、ブランドの中身を企業や団体が長期間守る仕組みの方が難しいからです。
さらに、地域資源を使っているという理由だけで安価に仕入れ、販売会社だけが大きな利益を得る構造では、持続可能な地域ブランドにはなりにくいでしょう。
生産者、加工会社、販売会社、物流会社など、それぞれが継続できる利益を確保しながら商品価格を設計し、売上が増えるほど地域の各事業者へ仕事が増える構造をつくることが、地域資源を事業として育てるうえでは欠かせません。
「地域の商品を買って応援する」から、「地域の商品を一緒につくる」へ。
さらに「地域でつくったものを地域外へ売り、その利益を地域へ戻す」ところまで進めば、企業による地域貢献は消費活動ではなく、地域に新しい産業をつくる活動へ変わっていきます。
会社の「本業」そのものを地域活性化につなげる
地域貢献という言葉を聞くと、本業とは別に予算と担当者を用意し、地域活動を行う姿を想像しがちですが、長期間続けることを考えるなら、会社が日常的に行っている本業そのものを地域課題の解決へ向ける方が、経営と地域貢献を両立しやすくなります。
建設会社なら、住宅や建物を造る技術を空き家改修、防災、省エネルギー改修、地域インフラ維持へ生かすことができ、IT会社ならシステム開発の技術を地域企業のDX、予約管理、EC、情報セキュリティ、業務効率化へ展開できます。
製造会社なら、地域企業への部品発注、共同開発、設備共有、若手技術者への技能継承などが考えられますし、ホテルなら地域食材の調達、地域文化を体験する宿泊商品、観光事業者との周遊企画、地域商品の販売など、宿泊業そのものを地域企業の販路として機能させることができます。
介護事業者であれば、高齢者へのサービス提供だけではありません。
地域で介護人材を採用して育成し、子育てや家族介護と両立できる働き方をつくり、地域の医療・福祉事業者と連携することも、本業を通じた地域の生活基盤づくりになります。
Web制作会社なら、地域店舗のWebサイトを作るだけで終わらず、EC、予約、採用、多言語化、アクセス解析まで支援し、「Webサイトを納品する会社」から「地域企業が地域外から売上を獲得する仕組みをつくる会社」へ役割を広げることもできます。
物流会社なら地域商品の共同配送やEC物流、小売店なら地域商品のテスト販売や消費者データの還元、不動産会社なら空き店舗と創業希望者のマッチング、士業なら創業、事業承継、雇用、知財、契約、資金計画などの専門知識を地域企業へ提供できます。
会社がすでに持っている本業の能力を、地域課題という別の角度から見直してみるのです。
ここで経営者が考えたいのは、「地域貢献で利益を出してもよいのか」という問題ですが、持続可能性を考えるなら、むしろ利益が出る事業にすることには大きな意味があります。
年間100万円の社会貢献予算で活動する場合、会社の業績が悪化すれば翌年度に予算を削減せざるを得ないかもしれませんが、地域課題を解決する事業そのものが年間1,000万円の売上と200万円の利益を生み出せるようになれば、その活動は会社にとって継続する理由を持ちます。
さらに、その200万円を人材育成や設備へ再投資し、事業規模が大きくなれば、新しい雇用や地域企業への追加発注を生み出せる可能性があります。
- 地域課題を解決する。
- その対価として会社が適正な利益を得る。
- 利益から人を雇い、設備へ投資する。
- 地域企業への発注が増える。
- 事業が成長し、さらに地域課題へ対応できる範囲が広がる。
この循環をつくれれば、地域貢献は会社にとって「余裕があるときに行う活動」ではなくなります。
ただし、ここで注意したいのが、地域貢献という言葉だけを企業広告に利用することです。
地域企業への発注額も、地域採用人数も、共同事業もほとんどないのに、「地域とともに未来をつくる会社」と広告だけを大きく打ち出せば、発信と実態の間に距離が生まれます。
CBSが企業ブランディングで重視したいのは、逆の順序です。
まず実際に地域企業と取引し、人を雇い、共同事業をつくり、商品を売り、その結果として生まれた発注額、雇用人数、売上、再投資額などを測定し、その事実を会社案内、採用サイト、Webサイト、営業資料などで正確に伝えます。
- 地域貢献。
- 地域との信頼。
- 社員の誇り。
- 採用。
- 取引先からの評価。
- 顧客からの共感。
- 企業ブランド。
- 事業成長。
- そして、地域への再投資。
すべてが必ずこの順序で発生するわけではありませんが、実態のある地域活動を長期間積み重ねれば、それ自体が「この会社は何を大切にしているのか」を示す企業ブランドの材料になっていきます。
地元を応援したい会社が、明日から始める「地域活性化実行計画」
ここまで制度や考え方を読んでも、「では明日の朝、会社へ行ったら最初に何をすればいいのか」が分からなければ、経営者向けの記事としては十分ではありません。
そこで最後は、地域貢献を理念ではなく経営計画へ落とします。
最初の作業は、寄附先を探すことでも補助金サイトを見ることでもなく、過去12か月の総勘定元帳、取引先一覧、従業員情報、商品別売上、設備一覧などを用意し、自社が持っている経営資源と外部へ流している資金を一度棚卸しすることです。
仕入高、外注費、広告宣伝費、修繕費、支払手数料、研修費、旅費交通費、システム費、物流費などを抽出し、年間で外部へいくら支払っているか、そのうち地域企業への支払額がいくらなのかを計算します。
仮に外部支払総額が年間8,000万円で、地域企業への支払額が1,600万円なら、この記事で便宜的に使う「地域内調達率」は20%です。
ここで翌年度の目標を25%に設定するなら、単純に「5%上げる」と決めるのではなく、追加400万円分をどの費目から地域企業へ振り替えられるか、候補企業は存在するか、価格差や品質差はどの程度かまで調査します。
次は、人材を調べます。
従業員の年齢構成、必要資格、退職予定、採用経路、離職理由、残業時間、外注している仕事、専門人材が不足している部門などを整理し、今後3年間で「どの仕事を」「何時間分」「どの技能を持つ人に」担当してもらう必要があるのかを具体化します。
その後で地域を見る。
自治体が公表している総合計画、地方創生関連計画、産業振興計画、観光計画などを読み、自社が持つ技術や人材と地域課題が重なる部分を探します。
IT会社なら地域DX、製造会社なら産業振興や人材育成、建設会社なら防災や空き家、ホテルなら観光や地域産品、物流会社なら買い物支援や地域商品の販路拡大など、自社の本業と行政計画の接点を見つける作業です。
そこまで整理したら、自治体の産業振興担当部署、商工会、商工会議所、地域金融機関、よろず支援拠点などへ相談します。
相談するときには「何か補助金はありませんか」だけで終わらせず、「この地域課題に対して当社の技術を使った事業を考えているが、連携できる企業はないか」「同じ課題を持つ事業者はいないか」「自治体の計画と方向性が合っているか」まで聞いてみます。
ここで初めて、利用できる補助金、助成金、税制、融資などを確認します。
自社の支出・人材・技術を棚卸しする
↓
地域企業への現在の発注額を測る
↓
地域の課題を公的計画から調べる
↓
自社の本業との接点を探す
↓
自治体・支援機関・金融機関へ相談する
↓
連携できる地域企業を探す
↓
小規模な共同事業を設計する
↓
利用できる公的支援制度を確認する
↓
小さく実証する
↓
数字で効果を測る
↓
改善して翌年度へつなげる
この順番なら、「地域を応援したい」という思いを具体的な経営活動へ変えられます。
最初から数千万円規模の事業にする必要もありません。
従業員30人の製造会社なら、最初の一年は「地域企業への新規発注300万円」「地域採用2人」「地域企業との共同開発1件」「地域外売上500万円」といった小さな目標から始め、実際に達成できたかを翌年度に確認する方法でも十分です。
その際、地域貢献を測るKPIを設定します。
| 確認するもの | KPI例 | 経営上の意味 |
|---|---|---|
| 地域内調達 | 地域企業への年間発注額・地域内調達率 | 地域へ流した資金を確認 |
| 地域雇用 | 採用人数・3年定着率 | 仕事を継続的に残せたか確認 |
| 人材育成 | 研修時間・資格取得人数 | 地域人材への投資を確認 |
| 企業連携 | 地域企業との共同事業数 | 企業間連携を確認 |
| 商品開発 | 地域資源商品の売上 | 事業として成立しているか確認 |
| 域外需要 | 地域外顧客からの売上 | 外部から地域へ資金を呼び込めたか確認 |
| 再投資 | 地域関連事業への再投資額 | 継続性を確認 |
ここで特に測ってほしいのが「域外売上」です。
地域企業同士が地域内の既存需要だけを取り合うのではなく、地域企業が連携して新商品やサービスをつくり、地域外から1,000万円、3,000万円、1億円という売上を獲得できれば、その資金を地域の仕入先、従業員、物流会社、設備会社などへ分配できるからです。
仮に地域資源を使った新商品が年間3,000万円売れ、そのうち地域外からの売上が2,000万円、地域企業への原材料発注が700万円、地域物流会社への発注が200万円、新規雇用が2人だったとします。
これなら「地域を応援しました」という曖昧な報告ではなく、「地域外から2,000万円の需要を獲得し、その事業によって地域企業へ900万円を発注し、2人の仕事を新たにつくった」と、会社が地域経済へ与えた影響を具体的に説明できます。
数字がそろったら、初めて本格的に情報発信します。
会社のWebサイトや採用ページで、成功した事業だけを並べるのではなく、「地域内調達率30%を目標にしたが24%だった」「品質基準を満たす取引先が不足していたため、翌年度は地域企業との共同改善を行う」といった課題まで説明すれば、地域貢献を広告として利用するだけではない会社の姿勢が見えてきます。
そして翌年度、同じ指標をもう一度測ります。
地域企業への発注額は増えたのか、地域採用した社員は定着したのか、共同開発した商品は利益を生んだのか、地域外売上は増えたのか、その利益から地域へ再投資できたのかを確認し、結果が悪ければ活動を修正します。
地域貢献を「やった・やらなかった」で管理するのではなく、経営指標として毎年測る。
ここまでできれば、「地元を応援したい」という経営者の思いは、会社の理念だけではなく、発注、雇用、商品、売上、人材育成、投資という実際の数字の中に現れるようになります。
地元を応援することと、会社を成長させることは、必ずしも別々の話ではありません。
この記事を書くために制度や地域経済政策を追っていくと、企業にできる地域貢献は、私たちが普段イメージしている「寄附」「協賛」「地域イベントへの参加」よりも、はるかに日常の経営に近いところに存在していることが分かります。
一つひとつを取り出せば、それほど派手には見えない活動ですが、年間300万円の地域発注が10年間続けば3,000万円になり、地域で3人を雇用してその雇用が長期間続けば、給与として地域へ流れる金額はさらに大きくなります。
そこへ共同開発、設備投資、人材育成、地域外への販売が加われば、会社が地域へ与えている影響は「今年はいくら寄附したか」という一つの数字だけでは測れなくなります。
そして会社側にも、新しい可能性が生まれます。
地域企業との取引から新しい技術が見つかるかもしれませんし、地域資源からこれまで会社になかった商品が生まれ、地域課題を解決するために始めたサービスが数年後には新しい収益事業へ育つ可能性もあります。
地域で育てた社員が会社の中核人材になり、その人が次の若手を育てるようになれば、地域貢献と企業成長の境界はさらに見えにくくなります。
そして、実際に積み重ねた地域企業への発注、雇用、人材育成、共同開発、地域外売上、再投資の実績を数字として残し、その事実を誇張せず社会へ伝えていくことができれば、それは会社が何を大切にして経営しているのかを示す企業ブランディングにもなります。
会社が成長することで、新しい仕事が生まれる。
新しい仕事によって地域へ所得が生まれる。
地域企業への発注が増える。
地域の商品が外へ売れる。
利益が生まれる。
その利益が次の設備、人材、商品へ再投資される。
そして、また地域に新しい仕事が生まれる。
企業だからこそできる持続可能な地域貢献とは、特別な一日をつくることではなく、この循環を10年、20年と続けられる会社を地域の中につくることなのかもしれません。
「地元を応援したい。でも、何をすればいいのか分からない。」
そう感じたときは、特別な地域貢献活動を探す前に、自社の取引先一覧、仕入れ、外注費、採用、人材、設備、技術、商品、サービスを一度机の上に並べてみてください。
地域のために会社ができることは、どこか遠くにある新しい活動ではなく、すでに自社が持っている経営資源の中にあり、それを「地域のためにも使えないか」という視点で見直すことこそが、会社と地元の新しい関係をつくる最初の一歩になります。
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会社だからできる力に
変えてみませんか?
地元のために何かしたい。地域の会社や人を応援したい。 そう考えていても、実際に会社として何から始めればよいのか分からず、 思いだけで止まってしまうこともあるのではないでしょうか。
地域貢献は、寄附や協賛だけではありません。 地域企業への発注、地域での雇用、人材育成、商品開発、 地域資源を生かした新事業、本業を通じた地域課題の解決など、 企業だからこそできる方法があります。
そして大切なのは、地域への貢献と会社の成長を別々に考えないこと。 地域との新しい取引が生まれ、人が育ち、新しい商品やサービスが生まれ、 その実績が積み重なれば、それは会社そのものの価値にもつながっていきます。
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