【売れる企業は何が違う?】新商品を減らすG-SHOCK、皿になるフライパン|日本企業が挑む「常識を変える商品戦略」

新しい商品を発売すれば、企業の売上は伸びるのでしょうか。

家電量販店には毎年のように新型の掃除機や炊飯器が並び、スーパーマーケットでは期間限定のお菓子や飲料が次々と登場し、ファッション業界でも季節が変わるたびに新しい商品が発売されていますが、消費者の立場から考えると、必ずしも新しい商品ばかりを購入しているわけではありません。

例えば、長年使い続けているお気に入りの腕時計がある人もいれば、何年も同じメーカーの調理器具を買い替えながら使っている人もいるでしょう。

新商品が登場するたびに興味を持つ人がいる一方で、使い慣れた商品だからこそ安心して購入できるという人も少なくありません。

こうした消費者の行動を考えると、企業が売上を伸ばす方法は、新しい商品を増やすことだけではないと分かります。

ITmedia ビジネスオンラインでは、日本企業の商品戦略に関する興味深い話題が紹介されました。

一つは、カシオ計算機が展開する腕時計ブランド「G-SHOCK」の販売戦略です。

同社は、新しい商品を次々に投入する従来の方法を見直し、長年支持されてきた定番モデルの販売に力を入れることで、ブランドの魅力を改めて消費者へ伝えようとしています。

もう一つは、新潟県燕三条の調理用品メーカー、和平フレイズ株式会社が開発した「皿になるフライパン」です。

料理を作った後にハンドルを取り外せば、そのまま食卓で皿として使えるという商品ですが、開発の過程では約3,000個もの製品を廃棄する問題が発生し、商品化までに大きな困難があったと報じられています。

腕時計とフライパンでは、商品の用途も購入する目的も異なります。

それでも両社の取り組みを詳しく見ていくと、企業が成長するために必要なことは、単に商品を増やしたり、目新しい機能を追加したりすることではなく、顧客が本当に求めている価値を見極め、その価値を継続的に提供できる仕組みを作ることなのではないかという、共通する経営課題が浮かび上がってきます。

今回は、身近な商品に隠された企業の工夫や、商品開発の裏側で起こる出来事を紹介しながら、日本企業がどのように競争力を高め、新しい成長の可能性を探っているのかを、CBS│企業ブランディング支援™の視点で考えていきます。

新商品を増やさない?G-SHOCKが考える新しい販売戦略

1983年、カシオ計算機から一つの腕時計が発売されました。

その腕時計には、当時の常識から考えると、少し変わった開発思想がありました。

腕時計は精密機器であり、落としたり強い衝撃を与えたりすれば壊れてしまうものだと考えられていた時代に、カシオは「落としても壊れにくい腕時計」を目指し、耐衝撃構造を備えたG-SHOCKを開発したのです。

発売から40年以上が経過した現在でも、G-SHOCKは日本を代表する腕時計ブランドの一つとして知られています。

しかし、現在の腕時計市場を取り巻く環境は、1980年代とは大きく異なります。

スマートフォンを持っていれば時刻を確認できるだけでなく、予定の管理や天気予報の確認もでき、スマートウォッチを使えば通知の確認や健康管理まで行えるため、腕時計には単に時間を知らせる道具としての役割だけではない、新しい価値が求められるようになりました。

それでも、G-SHOCKを購入する若い世代がいます。

しかも、最新の機能を搭載した商品だけでなく、昔から続く角形デザインのモデルや、比較的シンプルな形状のモデルにも関心が集まっているというのです。

ここに、今回の話題の面白さがあります。

通常、企業が若い消費者を獲得しようとするときには、最新の流行を取り入れた商品を開発したり、従来の商品にはなかった機能を追加したりする方法を考えますが、G-SHOCKの場合は、長年販売してきた商品の魅力を改めて伝えることが、新しい顧客との接点を作る方法の一つになっています。

例えば、角形デザインの5000シリーズは、初代モデルから受け継がれるG-SHOCKらしさを感じさせる商品です。

一方、2100シリーズは、比較的薄くすっきりとした形状が特徴であり、普段着や仕事着にも合わせやすい腕時計として、従来のG-SHOCKとは異なる印象を持つ消費者にも選ばれる可能性があります。

興味深いのは、同じ腕時計でも、世代によって感じる魅力が異なることです。

例えば、1990年代にG-SHOCKを愛用していた人が、現在の店舗で当時を思わせるデザインの商品を見つければ、懐かしさから購入を検討するかもしれませんし、初めてそのデザインを見る若い人にとっては、他の腕時計にはない個性的な商品として映ることも考えられます。

企業が長年販売してきた商品には、こうした時間の積み重ねによって生まれる価値があります。

新しい商品を発売することで消費者の関心を集めることはできますが、長く支持される商品を育てることができれば、企業は世代を超えて顧客との関係を築ける可能性があるのです。

では、なぜカシオは新商品の投入方法を見直し、定番商品の販売に力を入れようとしているのでしょうか。

その理由を考えるには、商品を増やすことによって企業にどのような負担が生まれるのかを知る必要があります。

例えば、ある腕時計メーカーが毎月10種類の新商品を発売すると仮定した場合、年間では120種類の商品を市場へ投入することになりますが、それぞれの商品について販売数量を予測し、必要な部品を調達し、製造計画を立て、販売店へ商品を届けるだけでなく、広告や販促資料を制作する必要もあるため、商品数が増えるほど管理する業務は複雑になります。

しかも、発売した商品がすべて予想どおりに売れるとは限りません。

人気の高い商品は短期間で売り切れるかもしれませんが、消費者の反応が弱かった商品は店舗や倉庫に残り、値引き販売や在庫処分を検討しなければならなくなる場合があります。

企業にとって、売れ残った商品は単に保管場所を占有するだけではなく、すでに支払った製造費用を回収できない可能性があるという点でも、経営上の負担になります。

そこで、長年の販売実績があり、一定の需要が見込める定番商品を中心に販売する方法が考えられます。

過去の販売数量を参考にすれば、需要を予測しやすくなる可能性があり、商品ごとの広告制作や販売促進の負担を抑えられる場合もあるでしょう。

ただし、定番商品を重視すれば必ず利益が増えるというわけではありません。

消費者の好みが変化した場合には販売数量が減少する可能性がありますし、新しい商品を求める顧客の需要に十分対応できなければ、競合メーカーへ顧客が流れてしまうことも考えられます。

そのため、企業には定番商品を育てながら、新しい需要を取り込む商品開発も続けるという、難しい判断が求められます。

G-SHOCKの場合、長年支持されてきた定番モデルを大切にしながら、素材やデザインにこだわった高価格帯の商品、他のブランドとのコラボレーション商品なども展開しています。

こうした幅広い商品構成によって、初めてG-SHOCKを購入する消費者だけでなく、すでに複数の腕時計を所有している愛好家にも対応しようとしているのです。

ここで、もう一つ考えてみたいことがあります。

もし、腕時計を購入する目的が単に時刻を確認することだけであれば、スマートフォンが普及した現在、腕時計を購入する必要性は以前より小さくなっているはずですが、それでもG-SHOCKを選ぶ人がいるということは、消費者が商品の機能以外にも価値を感じている可能性があります。

例えば、頑丈な腕時計を身に着けている安心感や、長年変わらないデザインへの愛着、好きなブランドの商品を所有する満足感などは、時刻表示の機能だけでは説明できません。

初めてアルバイトで得た給料を使って購入した腕時計を、社会人になってからも大切に使っている人がいるかもしれませんし、学生時代に憧れていたモデルを、大人になってから購入する人もいるでしょう。

こうした購入の動機には、商品の性能だけでなく、個人の経験や思い出が関係しています。

企業が長年販売してきた商品には、このような消費者との関係が積み重なっている場合があります。

そして、ブランドに対する信頼や愛着が強くなれば、消費者は新しい商品を購入するときにも、同じメーカーの商品を選ぶ可能性が高まるかもしれません。

もちろん、ブランドの知名度が高いだけで商品が売れるわけではありません。

価格や品質、デザイン、販売方法など、さまざまな条件がそろって初めて購入につながりますが、長年支持されてきた商品を持つ企業には、新しい企業が短期間では獲得しにくい強みがあると考えられます。

CBSが今回のG-SHOCKの戦略で注目するのは、まさにこの点です。

新しい商品を増やして売上を伸ばすことだけでなく、すでに持っている商品の価値を改めて見直し、顧客との関係を長く維持することも、企業の成長につながる重要な経営戦略なのです。

フライパンなのに、そのまま食卓へ?燕三条の老舗メーカーが挑む商品開発

仕事から帰宅し、夕食を作る場面を想像してみてください。

冷蔵庫から食材を取り出し、フライパンで肉や野菜を炒め、料理が完成したら皿へ盛り付けて食卓に運びますが、食事が終わった後にはフライパンと皿を洗い、調理に使った道具も片付けなければならないため、料理を作ることよりも後片付けの方が面倒だと感じる人もいるでしょう。

もし、料理を作ったフライパンを、そのまま皿として使えたらどうでしょうか。

別の皿へ盛り付ける必要がなくなり、洗い物を少なくできる可能性があります。

一人暮らしの人であれば、限られたキッチンの収納スペースを有効に使えるかもしれませんし、忙しい共働き世帯にとっても、料理から片付けまでの手間を減らせる商品は魅力的に感じられるでしょう。

そんな発想から生まれたのが、和平フレイズ株式会社の「Hetta!(ヘッタ)」です。

同社は、新潟県燕三条に本社を構える調理用品メーカーであり、フライパンや鍋など、家庭で使うさまざまな商品を企画・販売しています。

燕三条といえば、金属加工やものづくりの産地として知られていますが、和平フレイズは自社工場を持たず、製造を外部へ委託するファブレスという事業形態を採用していることも特徴です。

ファブレスとは、商品の企画や開発、販売などを自社で行い、実際の製造は外部の工場へ委託する仕組みを指します。

自社で大規模な製造設備を保有する必要がないため、設備投資の負担を抑えながら商品開発に力を入れられる可能性がありますが、その一方で、製造委託先との品質管理や納期調整が重要になるという特徴もあります。

和平フレイズは、多くの調理用品を取り扱いながら、消費者の生活の変化に合わせた商品開発を進めています。

その中で生まれたHetta!は、フライパンで料理を作った後にハンドルを取り外し、そのまま食卓で皿として使えるという商品です。

一見すると、フライパンのハンドルを取り外せるようにしただけのように思えるかもしれません。

しかし、実際に商品を開発する立場から考えると、調理器具と食器の役割を一つにまとめることは、決して簡単なことではありません。

フライパンは、コンロの上で安定して使える必要があります。

一方、皿として使用する場合には、食卓へ置いたときの安定性や、料理の見た目、持ち運びやすさなども重要になるため、従来のフライパンとは異なる視点から商品を設計しなければなりません。

さらに、調理中は高温になることから、食卓で使う際の安全性についても十分に考える必要があります。

例えば、料理を作った直後のフライパンを、そのまま木製のテーブルへ置けば、熱によってテーブルを傷めてしまう可能性があります。

また、食卓へ運ぶ際には、ハンドルの取り付けや取り外しが安全に行えることも重要になります。

つまり、調理器具としての性能を維持しながら、食器としての使いやすさも確保しなければならないのです。

和平フレイズの商品開発では、設計図だけでなく、段ボールを使って実物大の試作品を作ることもあるといいます。

段ボールで作った試作品では実際に料理を作ることはできませんが、商品を手に取ったときの大きさや、収納したときの感覚などを確かめることができるため、設計図だけでは分からなかった問題に気付くきっかけになります。

例えば、図面ではコンパクトに見えた商品でも、実物大にしてみると収納しにくかったり、手に持ったときに想像以上に大きく感じられたりする場合があるでしょう。

反対に、実際の形にしてみることで、当初は気付かなかった便利な使い方を発見できる可能性もあります。

このように、商品開発ではアイデアを考えることだけでなく、実際に使う場面を想像しながら、試作品を作って確かめることが重要になります。

しかし、Hetta!の商品化では、企業にとって非常に厳しい出来事が発生しました。

発売に向けて準備していた初回製品約3,000個を、すべて廃棄しなければならなくなったのです。

約3,000個と聞いても、具体的な規模を想像しにくいかもしれません。

仮に一つの段ボール箱に20個の商品を入れるとすると、150箱分に相当する数であり、それだけの商品を作った後に販売できないと判断しなければならない状況は、企業にとって大きな負担になります。

しかも、商品を作るためには材料費や製造費用がかかっています。

さらに、すでに取引先から注文を受けていた場合には、予定していた納期に商品を届けられなくなる可能性もあり、販売機会を失うだけでなく、取引先との関係にも影響することが考えられます。

問題の原因は、製品の外側に使用した塗料の一部が、内側のコーティングに重なってしまうことでした。

使用を続けるうちに外側の塗料が剥がれる可能性があったため、そのまま販売することはできなかったのです。

ここで、企業には難しい判断が求められます。

すでに完成した商品を廃棄すれば、製造費用を回収できなくなる可能性がありますし、作り直すためには追加の費用や時間も必要になりますが、品質上の問題を抱えたまま販売すれば、購入者からの苦情や返品につながるだけでなく、企業全体への信頼を損なうおそれがあります。

和平フレイズは、品質を優先する判断をしました。

問題のある製品を廃棄したうえで、塗料や塗装工程を見直し、商品化に向けた改善を進めています。

この出来事を、単に商品開発の失敗として片付けてしまうのは適切ではないでしょう。

企業にとって、品質上の問題が発生したときに、どのような判断を下すかということは、長期的なブランド価値を考えるうえでも重要だからです。

例えば、購入した商品に不具合が見つかった場合、消費者はその商品だけでなく、販売した企業そのものに不安を感じることがあります。

特に、日常生活で繰り返し使う調理器具の場合、安全性や品質への信頼は購入を判断する重要な要素になります。

一度失った信頼を取り戻すには、多くの時間がかかる場合があります。

そう考えると、約3,000個の製品を廃棄するという判断は、短期的な売上よりも、顧客に安心して商品を使ってもらうことを優先した経営判断だったと考えることもできます。

もちろん、品質を優先したからといって、必ず商品が売れるわけではありません。

販売価格や使いやすさ、競合商品との違いなど、購入を左右する要因は数多く存在するため、実際の販売数量や顧客の評価を確認しなければ、事業として成功したかどうかを判断することはできません。

それでも、Hetta!の開発には、商品を作る企業が直面する現実的な課題が表れています。

アイデアを考えることは比較的簡単でも、そのアイデアを安全で使いやすい商品として完成させ、適切な価格で販売し、継続的に利益を生み出す仕組みを作ることは、決して簡単ではありません。

さらに興味深いのは、商品を発売した後に、消費者が企業の想定していなかった使い方を発見する場合があることです。

Hetta!についても、袋ラーメンを作るといった使い方が見られたと報じられています。

企業は商品を開発するとき、どのような人が、どのような場面で使うのかを想定しますが、実際に購入した消費者は、企業が考えていなかった用途を見つけることがあります。

例えば、アウトドア用品として開発された商品が家庭での日常使いに適していると評価されたり、収納用品が別の用途で人気になったりすることも考えられるでしょう。

こうした消費者の行動を観察することで、企業は次の商品開発につながるヒントを得られる可能性があります。

つまり、商品開発は発売した時点で終わるものではありません。

実際に使う人の反応を確認し、どのような点が評価され、どのような不便さが残っているのかを調べることによって、商品を改良したり、新しい用途を提案したりすることができるのです。

CBSがHetta!の取り組みで特に注目するのは、フライパンを皿として使えるようにしたという発想だけではありません。

消費者の日常生活にある小さな不便さを見つけ、その解決方法を商品として形にしようとしたこと、そして商品化の途中で発生した問題に対して品質を優先したことに、ものづくり企業としての重要な姿勢が表れていると考えています。

2つの企業に共通するのは「当たり前を疑う」という発想

G-SHOCKとHetta!では、商品も企業の歴史も異なります。

しかし、両社の取り組みを比較すると、これまで当たり前だと考えられてきた商品開発や販売の方法を見直しているという共通点が見えてきます。

G-SHOCKの場合、新しい商品を次々に発売することだけが成長につながるわけではないという考え方です。

一方、Hetta!の場合、フライパンは料理を作るための道具であり、皿は料理を食べるための道具だという、従来の役割の区別を見直しています。

どちらも、これまでの方法を否定しているわけではありません。

むしろ、長年積み重ねてきた商品開発や販売の経験を生かしながら、消費者にとって新しい価値を見つけようとしているのです。

この考え方は、大企業だけでなく、中小企業や個人事業主にとっても参考になります。

例えば、地域で長年営業しているパン屋さんを想像してみてください。

その店では毎朝20種類のパンを焼いていますが、売上を確認してみると、特に人気が高いのは食パン、クロワッサン、あんパンの3種類であり、ほかの商品は日によって売れ行きが大きく変わるという状況だったとします。

この場合、売上を伸ばすために新しいパンを増やすことだけが正解とは限りません。

人気の高い商品について、焼き上がりの時間を分かりやすく案内したり、予約販売を始めたりすることで、顧客が購入しやすくなる可能性があります。

また、食パンを購入する人が多いのであれば、食パンに合うジャムやバターを紹介することも考えられるでしょう。

一方、商品数を減らしすぎると、これまで別の商品を購入していた顧客が離れてしまう可能性もあります。

そのため、単に売上の少ない商品をなくすのではなく、どの商品が顧客にとって重要なのかを調べながら、販売する商品の構成を見直す必要があります。

これは、G-SHOCKが定番商品の魅力を改めて伝えようとしている戦略と共通する考え方です。

次に、家具メーカーを考えてみましょう。

一般的に机は仕事や勉強に使うための道具ですが、一人暮らしの住宅では、机を置くためのスペースを十分に確保できない場合があります。

そこで、収納棚としても使える机や、必要なときだけ広げて使える机を開発すれば、限られた生活空間を有効に使いたい消費者にとって、魅力的な商品になる可能性があります。

これは、Hetta!が調理器具と食器の役割を組み合わせた発想に近いものです。

こうした商品開発では、必ずしも世界初の技術が必要になるわけではありません。

すでに存在している商品や機能を組み合わせたり、使い方を少し変えたりするだけでも、消費者にとって新しい価値が生まれる場合があります。

ただし、便利そうに見える商品が、必ず売れるとは限りません。

例えば、収納棚と机を組み合わせた商品を開発しても、机として使うには狭すぎたり、収納棚として使うには不便だったりすれば、消費者から選ばれない可能性があります。

複数の機能を持たせることによって、かえって使いにくくなる場合もあるのです。

そのため、商品を開発するときには、単に機能を増やすのではなく、消費者がどのような場面で使うのかを具体的に考える必要があります。

ここで、身近な商品について少し考えてみましょう。

例えば、傘です。

雨の日に使う傘は便利ですが、建物の中へ入ると濡れた傘をどこに置くか困ることがありますし、強い風が吹けば傘がひっくり返ってしまうこともあります。

こうした不便さを解決するために、収納しやすい構造や、風の影響を受けにくい形状を考えることができます。

もちろん、すでにさまざまな工夫を取り入れた商品が販売されています。

しかし、消費者が実際に使っている様子を観察すれば、まだ改善できる部分が見つかるかもしれません。

同じように、洗濯物を干す道具、収納用品、掃除用品、文房具など、日常生活で使う商品にも、使い方を見直す余地が残されている可能性があります。

大切なのは、商品を見たときに「これはこういうものだ」と決めつけないことです。

なぜ、この形になっているのか。

なぜ、この使い方が一般的なのか。

なぜ、消費者はこの商品を購入するのか。

こうした疑問を持つことで、これまで見えていなかった商品開発の可能性が見つかるかもしれません。

ただし、企業が新しい商品を開発する際には、思いついたアイデアをそのまま商品化するのではなく、実際に使う人が便利だと感じるか、適切な価格で販売できるか、安全性を確保できるかなど、さまざまな条件を確認する必要があります。

Hetta!の開発で約3,000個の製品を廃棄する問題が発生したことは、アイデアを実際の商品にすることの難しさを示しています。

一方、G-SHOCKが定番商品を大切にしていることは、新しいアイデアを生み出すことだけでなく、すでにある価値を育てることの重要性を教えてくれます。

企業が成長するために必要なのは、常に新しいことを始めることではなく、顧客にとって何が本当に必要なのかを考え続けることなのかもしれません。

CBSが考える、これからの企業に必要な商品戦略

今回の2つの事例を企業経営の視点から見ると、商品開発や販売戦略について、いくつかの重要なことが分かります。

まず、企業が商品を販売するときには、売上高だけでなく、利益をどのように確保するかを考える必要があります。

例えば、ある企業が1万円の商品を1,000個販売した場合、売上高は1,000万円になりますが、商品を製造するための費用や広告費、配送費などが大きければ、十分な利益を得られない可能性があります。

一方、同じ商品を800個しか販売できなかったとしても、製造費用や在庫管理費用を抑えることができれば、利益が増える場合もあるでしょう。

つまり、売上高が大きい企業が、必ずしも利益を多く得ているとは限らないのです。

G-SHOCKの定番商品を重視する戦略も、こうした視点から考えることができます。

長く販売されている商品であれば、過去の販売実績を参考に需要を予測しやすくなる可能性があり、商品ごとの広告制作や販売促進の負担を抑えられる場合もあるでしょう。

ただし、定番商品であっても、部品価格や人件費が上昇すれば利益率は低下する可能性があります。

さらに、人気商品に販売が集中すると、その商品が売れなくなった場合の影響が大きくなることも考えられます。

そのため、企業は定番商品を重視しながらも、新しい顧客を獲得するための商品開発を続ける必要があります。

次に、商品を購入する人の生活を理解することも重要です。

Hetta!の場合、フライパンの性能だけでなく、料理を作ってから片付けるまでの流れに注目したことが、商品開発の出発点になっています。

例えば、家電メーカーが掃除機を開発するとき、吸引力を高めることだけを考えていたとします。

しかし、実際に掃除機を使う人は、掃除機を取り出すことや、使い終わった後に収納することを面倒だと感じているかもしれません。

その場合、吸引力をさらに高めることよりも、軽量化や収納のしやすさを改善することが、購入の決め手になる可能性があります。

つまり、企業が商品を開発するときには、商品そのものだけでなく、顧客が商品を使う前後の行動まで考える必要があるのです。

さらに、企業が顧客の声をどのように集めるかも重要になります。

例えば、商品を購入した人にアンケートを実施すれば、満足している点や改善してほしい点を知ることができますが、アンケートだけでは、消費者が普段の生活で感じている小さな不便さを十分に把握できない場合もあります。

そこで、実際に商品を使っている様子を観察したり、購入後の口コミを分析したりする方法が考えられます。

和平フレイズのように、開発担当者自身が生活の中で感じた不便さを商品開発に生かすことも、一つの方法です。

また、企業が商品を販売する際には、顧客に商品の価値を分かりやすく伝えることも欠かせません。

例えば、皿になるフライパンを販売するとき、単に「ハンドルが取り外せます」と説明するだけでは、商品の便利さが十分に伝わらないかもしれません。

しかし、「料理を作ったら、そのまま食卓へ。洗い物も減らせます」と説明すれば、消費者は実際に使う場面を想像しやすくなります。

同じ商品でも、どのように説明するかによって、消費者が感じる価値は変わる可能性があります。

G-SHOCKの場合も同じです。

耐衝撃性や防水性能といった機能を説明することは重要ですが、それだけではブランドの魅力を十分に伝えられない場合があります。

例えば、仕事でも休日でも使えるデザインであることや、長年愛用できる商品であることを伝えれば、機能以外の価値に関心を持つ消費者にも訴求できるでしょう。

このように考えると、商品開発と販売促進は別々の仕事ではありません。

どのような顧客に、どのような価値を提供するのかを考えることが、商品を作る段階から販売する段階まで、一貫して重要になるのです。

そして、もう一つ忘れてはいけないのが、企業の信頼です。

Hetta!の開発では、品質上の問題によって約3,000個の製品を廃棄するという出来事がありました。

企業にとって、完成した商品を廃棄することは大きな損失ですが、品質に問題のある商品を販売すれば、購入者に不利益を与える可能性があります。

その結果、返品や苦情が増え、企業のブランドに対する信頼が低下することも考えられます。

短期的な売上を優先するのか、それとも長期的な信頼を守るのかという問題は、企業経営において避けて通れない課題の一つです。

もちろん、すべての問題を事前に発見できるわけではありません。

それでも、問題が発生したときに原因を調べ、必要な改善を行うことは、企業が長く事業を続けるために欠かせない姿勢です。

G-SHOCKが40年以上にわたってブランドを維持してきたことと、和平フレイズが品質を優先して商品開発を進めたことは、異なる事例ではありますが、企業が顧客との信頼関係を大切にすることの重要性を考える材料になります。

CBSは、企業の成長を評価する際、売上高や利益率だけでなく、こうしたブランドの信頼性や商品開発の姿勢にも注目する必要があると考えています。

ただし、信頼性が高い企業であっても、必ず業績が成長するわけではありません。

市場環境の変化や競合商品の登場、原材料価格の上昇など、企業の業績に影響する要因は数多く存在するため、企業の成長可能性を判断する際には、商品やブランドの魅力を評価すると同時に、実際の売上高や利益、財務状況などを確認することが重要になります。

面白い商品を作る企業と、継続的に利益を生み出す企業は、必ずしも同じではありません。

しかし、顧客の生活を理解し、商品の価値を分かりやすく伝え、品質を大切にする企業には、長期的な成長につながる可能性があるとCBSは考えています。

まとめ|企業の成長は「新しいことをする」だけではない

つまり、今回の2つの企業事例を通じてCBSが言いたいことは、企業が成長するために本当に必要なのは、新商品を次々に発売したり、これまでにない機能を追加したりすることではなく、すでに持っている商品の価値を見直し、消費者が日常生活で感じている不便さや、本当に求めていることを理解したうえで、その価値を継続的に提供できる仕組みを作ることだということです。

G-SHOCKの場合、40年以上にわたって培ってきたブランドの歴史や、長年支持されている定番モデルの魅力を改めて見直すことで、新しい世代の消費者にも商品を選んでもらう機会を広げようとしています。

一方、和平フレイズの「皿になるフライパン」は、フライパンで料理を作った後に皿へ盛り付けるという、私たちが当たり前のように繰り返してきた行動に疑問を持ち、調理器具と食器の役割を一つにまとめることで、料理や片付けの手間を減らすという新しい価値を提案しています。

両社の取り組みは正反対のようにも見えますが、実は共通しています。

それは、企業側が売りたい商品を一方的に増やすのではなく、消費者が何を求め、どのような理由で商品を購入し、実際の生活でどのように使っているのかを考えることから、商品戦略を組み立てているという点です。

例えば、地域で営業する飲食店であれば、新しいメニューを毎月増やすことよりも、長年人気のある看板料理の品質を高めたり、注文から提供までの時間を短縮したりする方が、顧客満足度の向上につながるかもしれませんし、家具メーカーであれば、収納力の高い商品を開発するだけでなく、購入者が実際にどのような場所へ設置し、何を収納しているのかを調べることで、これまで気付かなかった改善点を発見できる可能性があります。

もちろん、こうした取り組みが必ず売上や利益の増加につながるわけではありません。

どれほど便利な商品でも、販売価格が高すぎれば購入されない可能性がありますし、長年支持されてきた定番商品であっても、消費者の好みや生活環境が変化すれば、以前ほど売れなくなることも考えられるため、企業は商品の魅力を伝えるだけでなく、実際の販売数量や利益率、顧客の反応などを確認しながら、商品や販売方法を改善し続ける必要があります。

そして、もう一つ重要なのが、顧客からの信頼です。

和平フレイズが約3,000個の製品を廃棄してまで品質を優先したことは、短期的な売上を確保することよりも、購入者に安心して商品を使ってもらうことを重視した判断として考えることができ、企業が長く事業を続けるためには、こうした品質への責任も欠かせません。

企業の成長というと、最新技術の開発、大規模な設備投資、新市場への進出など、何か大きなことを始めなければならないように感じるかもしれませんが、実際には、すでに販売している商品の魅力を見直したり、消費者が日常生活で感じている小さな不便さを解決したりすることが、新しい事業機会を見つけるきっかけになる場合もあります。

つまり、CBSが最も伝えたいのは、「新しい商品を作ること」そのものが企業の成長ではなく、「顧客にとって価値のあるものを見つけ、その価値を長く届け続けること」が、企業の持続的な成長を支える重要な条件だということです。

商品を増やすべきなのか、それとも減らすべきなのかという問題に、すべての企業に共通する正解はありません。

大切なのは、自社がすでに持っている強みを理解し、顧客の生活や価値観の変化を見極めながら、どの商品を育て、どのような不便さを解決し、どこに経営資源を集中させるべきなのかを考え続けることです。

「自社の商品やサービスには、まだ十分に生かされていない価値があるのではないか。」

G-SHOCKと皿になるフライパンという、一見まったく関係のない2つの商品が教えてくれるのは、企業が成長するためのヒントは、遠く離れた新しい市場だけでなく、すでに販売している商品や、消費者の何気ない日常生活の中にも隠されているということなのです。

今回紹介したG-SHOCKとHetta!は、企業が商品を売るために何を考え、どのような工夫をしているのかを知るうえで、非常に興味深い事例です。

G-SHOCKは、40年以上の歴史を持つブランドでありながら、現在の消費者に合わせて販売戦略を見直しています。

新商品を増やすことだけに頼るのではなく、長年支持されてきた定番商品の魅力を改めて伝えることで、ブランドの価値を高めようとしているのです。

一方、和平フレイズのHetta!は、フライパンと皿という別々の商品の役割を組み合わせることで、消費者の生活を便利にしようとしています。

さらに、約3,000個の製品を廃棄する問題に直面しながらも、品質を優先して商品化したことは、ものづくり企業としての姿勢を考えるうえで重要な事例といえるでしょう。

ここで、もう一度、身近な生活を振り返ってみてください。

毎日使っている商品でも、「なぜ、この形なのだろう」と考えることはあまりないかもしれません。

例えば、財布、傘、食器、収納用品、文房具など、私たちの周りには長年使われてきた商品が数多くあり、その中には、すでに完成された形に見えるものもあるでしょう。

しかし、生活環境や働き方が変化すれば、同じ商品でも求められる価値が変わる可能性があります。

一人暮らしの人が増えれば、コンパクトで多用途に使える商品が便利だと感じられるかもしれません。

共働き世帯では、家事にかかる時間を短縮できる商品への関心が高まる可能性もあります。

また、長く使える商品を大切にしたいと考える消費者にとっては、新しい機能よりも耐久性や修理のしやすさが重要になる場合もあるでしょう。

企業がこうした変化を理解できれば、必ずしも大規模な設備投資や画期的な技術開発を行わなくても、新しい商品価値を生み出せる可能性があります。

ただし、消費者の需要を正確に把握することは簡単ではありません。

企業が便利だと考えて開発した商品でも、実際にはあまり売れない場合があります。

反対に、企業が想定していなかった使い方が広まり、人気商品になることもあるでしょう。

そのため、商品を発売した後も、購入者の反応を確認し、必要に応じて改善を続けることが重要になります。

G-SHOCKの場合、長年の販売実績を持つ定番商品を大切にしながら、新しい世代の顧客を獲得することが課題になります。

Hetta!の場合は、便利な商品として注目されるだけでなく、継続的に購入される商品へ育てていくことが重要になるでしょう。

両社の取り組みは異なりますが、共通しているのは、消費者が何を求めているのかを考え続けていることです。

そして、企業が成長するためには、商品を開発する力だけでなく、その価値を顧客へ伝え、継続的に販売する仕組みを構築する必要があります。

ここで、企業経営に関わる人にとって、考えてみる価値のある問いがあります。

「自社の商品やサービスの中に、まだ十分に伝えられていない価値はないだろうか。」

新しい商品を開発する前に、すでに販売している商品の魅力を見直してみる。

顧客が商品を使っている様子を観察し、普段は気付かない不便さを探してみる。

あるいは、これまで別々に提供していたサービスを組み合わせることで、顧客にとって便利な仕組みを作れないか考えてみる。

こうした取り組みは、大企業だけでなく、中小企業や個人事業主でも実践できる可能性があります。

もちろん、すべてのアイデアが成功するわけではありませんが、顧客の立場から商品やサービスを見直すことは、新しい事業機会を発見するための第一歩になるでしょう。

今回のG-SHOCKとHetta!の事例から、CBSが特に伝えたいことがあります。

企業の成長は、新しい商品を次々に発売することだけで実現するものではありません。

長年支持されている商品の価値を深めることも、身近な不便さを解決する商品を生み出すことも、企業が成長するための重要な方法です。

そして、どちらの方法を選ぶ場合でも、顧客にとって本当に価値のある商品やサービスを提供できるかどうかが、最も重要な課題になります。

「これまで当たり前だったことは、本当にこれからも当たり前なのか?」

企業がこの問いを持ち続けることは、変化する市場の中で新しい可能性を見つけるきっかけになるはずです。

CBS│企業ブランディング支援™では、今後も日本企業のユニークな商品開発や経営戦略に注目し、その背景にある企業価値と成長可能性を、身近な事例と客観的な情報に基づいて紹介していきます。


参考資料・出典

CBS│企業ブランディング支援™
企業の成長を生み出すヒントは
「当たり前」の中にある!
商品の価値を見直すことから、
新しい可能性が見えてくる。
新商品を増やすのではなく、長年愛されてきた定番商品の魅力を改めて見つめ直すG-SHOCK。 そして、フライパンは料理を作る道具という常識を変え、 調理後そのまま食卓に出せる商品を生み出した和平フレイズ。
両社の取り組みから見えてくるのは、 企業の成長につながるアイデアは、必ずしも新しい技術や大きな設備投資から生まれるわけではない ということです。
CBS│企業ブランディング支援™では、 日本企業の商品開発、経営戦略、ブランドづくり、 成長への取り組みを独自の視点で取り上げています。 企業の魅力や工夫を知ることが、新しいビジネスのヒントにつながると考えているからです。
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