
「広告費を増やしたのに問い合わせが増えない」。そんな悩みを抱える会社がある一方、広告をほとんど出さなくても、口コミや紹介から仕事が入る会社があります。この差は、知名度や広告予算だけではありません。お客様が誰かに話したくなる「体験」を作れているか。その違いを具体的に見ていきます。
広告費をかけても売れない会社に共通する5つの原因
広告を出している。
ホームページもある。
SNSも更新している。
それなのに、問い合わせが思うように増えない。
こうなると経営者としては、「広告費が少ないのではないか」と考えたくなります。
月5万円なら10万円へ、10万円なら20万円へ。
確かに、広告の表示回数を増やせば、自社を知ってもらえる機会は増えるかもしれません。
ただ、ここには見落としやすい問題があります。
広告は人を連れてくることはできても、その会社を信用するところまでは保証してくれないからです。
2026年3月に電通が発表した「2025年 日本の広告費」によると、日本の総広告費は8兆623億円となり、4年連続で過去最高を更新しました。
なかでもインターネット広告費は4兆459億円。前年比110.8%まで伸び、総広告費に占める割合は初めて50%を超えています。
さらに2026年のインターネット広告媒体費は3兆5,840億円まで増えると予測されています。
つまり、企業が広告を出す場所には、競合企業もこれまで以上に広告費を投じているのです。
「広告を出している」というだけでは、以前ほど大きな差になりにくくなっています。
原因① 広告を「売上を作る装置」だと思っている
例えば、鹿児島県内で住宅リフォームを行うA社が、毎月20万円のWeb広告を始めたとします。
広告経由で月1,000人がホームページを訪れるようになりました。
ところが問い合わせは5件。
そのうち契約は1件でした。
ここで、
「アクセスが足りない。広告費を40万円にしよう」
と考えてしまうケースがあります。
しかし、本当に見るべきなのは1,000という数字ではありません。
なぜ995人が問い合わせをしなかったのか。
こちらです。
ホームページを開いてみると、施工事例の更新は2年前で止まっている。
料金の目安がない。
代表者の顔や考え方も分からない。
Googleで会社名を調べても口コミが3件しかない。
これでは、せっかく広告で人を呼んでも、
「本当にここへ頼んで大丈夫かな」
という不安が残ります。
仮に広告費を倍にして訪問者が2,000人になったとしても、根本的な問題は残ったままです。
広告費を増やす前に、広告から問い合わせまでの途中に穴が開いていないかを調べた方がよいケースは少なくありません。
原因② 自社の「すごさ」ばかり伝えている
企業のホームページを見ていると、
「高品質」
「安心価格」
「地域密着」
「お客様第一」
「豊富な実績」
という言葉をよく見かけます。
どれも悪い表現ではありません。
問題は、競合会社も同じことを書いている点です。
例えば、
「地域密着で丁寧に対応します」
と書くより、
「霧島市を中心に年間320件対応。ご相談から施工後の確認まで同じ担当者が対応します」
と書かれていた方が、会社の姿が見えてきます。
「経験豊富なスタッフが対応します」
より、
「住宅設備の修理に18年間携わってきた担当者が現地を確認します」
の方が具体的です。
広告から来た人は、その会社のファンではありません。
初めて会社を知った人です。
だからこそ、
「当社はすごい会社です」ではなく、「なぜ安心して頼めるのか」を証拠と一緒に見せる。
実績、件数、写真、お客様の声、資格、対応地域、事例などが、その証拠になります。
原因③ 問い合わせ件数だけで広告を評価している
ここは少し数字で考えてみます。
B社は月30万円の広告費を使い、30件の問い合わせを獲得しました。
1件の問い合わせを得るために使った広告費は1万円です。
一見すると悪くありません。
ところが契約まで確認すると、30件中3件でした。
さらに、その3件は一度利用しただけで終わっています。
一方、C社は同じ30万円で問い合わせが15件しかありませんでした。
しかし15件中8件が契約。
そのうち3人が再度利用し、さらに2人から知人の紹介が発生したとします。
最初の問い合わせ件数だけを比べれば、
B社30件、C社15件。
B社の勝ちです。
しかし実際の商売は、そこで終わりません。
広告を見るべき期間を「問い合わせまで」から「その後」へ伸ばすと、評価が逆転することがあります。
企業ブランディングでは、ここをかなり大切にしたいところです。
一人のお客様と出会うためにいくら使ったかだけではなく、その一人との関係からどれだけ信用が広がったか。
この視点を持つと、広告費の見え方が変わります。
原因④ 広告と実際の会社に差がある
広告では、
「親切・丁寧・スピード対応」
と書いてある。
ところが電話をすると、
「担当者がいないので分かりません」
と言われる。
問い合わせフォームから連絡しても3日間返信がない。
見積もりを頼んだら説明がほとんどない。
これでは広告が立派であるほど、実際の対応との落差が目立ちます。
これはブランディングで非常にもったいない状態です。
ブランドとはロゴや広告デザインだけではありません。
電話に出た人の話し方も、見積書の分かりやすさも、訪問時間を守ることも、納品後の対応もブランドの一部です。
広告担当者だけがブランディングをしているわけではないのです。
受付、営業、現場、配送、経理、アフターサービス。
お客様と接するすべての場所で会社の印象は作られています。
原因⑤ 売った瞬間にお客様との関係が終わっている
ここが、口コミで仕事が来る会社との差として非常に大きい部分です。
商品を売った。
工事が終わった。
代金を受け取った。
そこで関係終了。
これでは、新しい仕事を取るたびに、新しいお客様を広告で探し続けることになります。
例えば1件のお客様を獲得するために広告費が2万円かかる会社なら、新規顧客100人で200万円です。
もちろん、実際には業種や契約単価によって大きく変わります。
それでも、
「新規顧客は毎回ゼロからお金を払って集めるもの」
という状態が続けば、広告費が経営を圧迫する可能性があります。
反対に100人のお客様のうち10人が誰かを紹介してくれれば、新しい顧客との接点が別の場所から生まれます。
ここで初めて、広告だけに頼らない集客へ変わっていきます。
口コミで仕事が来る会社は「紹介したくなる理由」を作っている
口コミで仕事が入る会社を見ると、何か特別な広告手法を使っているように思うかもしれません。
実際はもっと地味です。
電話の対応が気持ちいい。
説明が分かりやすい。
約束した時間に来る。
見積もりが明確。
仕事が丁寧。
問題が起きたときに逃げない。
そして、仕事が終わった後にも気にかけてくれる。
一つひとつは小さなことです。
しかし、お客様からすると、この小さな経験が会社の評価になります。
「満足したお客様」と「紹介するお客様」は違う
ここは混同されやすいところです。
満足しているからといって、必ず口コミを書いたり知人を紹介したりするわけではありません。
例えば、自宅のエアコンが故障したので修理会社へ依頼したとします。
A社は時間通りに来て修理し、料金を受け取って帰りました。
故障は直っています。
不満はありません。
おそらく評価すれば「満足」です。
B社も同じように修理しました。
ただ帰る前に、
「今回壊れたのはこの部品です。ここにほこりがたまると負担がかかるので、月に一度ここだけ掃除しておくと長持ちしやすいですよ」
と教えてくれました。
さらに、
「今すぐ交換するほどではありませんが、この部品も少し古くなっています。半年後くらいに一度確認してください」
と説明してくれた。
料金は同じ2万円です。
数日後、会社の同僚が、
「うちもエアコンの調子が悪いんだよね」
と言ったとします。
このとき思い出されやすいのは、どちらでしょうか。
口コミが生まれる瞬間は、商品を受け取った瞬間だけではありません。
誰かに話したくなる小さな出来事が記憶に残ったときに、紹介が動き始めます。
口コミは「お願いするもの」より「話したくなる体験」から生まれる
「口コミを増やしたいので、お客様に口コミを書いてもらおう」
ここまでは間違いではありません。
Googleも、実際に利用した顧客へ口コミ投稿用リンクやQRコードを案内する方法を認めています。
ただし、ここには注意点があります。
「星5を付けてくれたら500円割引」
「高評価を書いてくれたらプレゼント」
といったやり方は避けなければなりません。
Googleは、金銭、割引、無料商品・サービスなどの見返りとして口コミを集める行為を禁止しています。
良い口コミだけを選んで依頼したり、悪い口コミを書かないよう求めたりすることも認められていません。
違反が確認された場合、口コミの削除だけでなく、新しい口コミを一定期間受け取れなくなったり、プロフィールに警告が表示されたりする場合もあります。
口コミを「買う」のではなく、
お客様が率直な感想を書ける環境を作る。
長い目で見れば、こちらの方が会社の信用につながります。
口コミをお願いするなら「満足した直後」を逃さない
口コミを依頼するタイミングにも差が出ます。
住宅リフォームなら工事が完成し、お客様と一緒に仕上がりを確認した直後。
修理会社なら、「直った!」とお客様が安心した直後。
BtoBなら納品が完了し、担当者から「助かりました」と言われたタイミングです。
1か月後に突然、
「口コミ投稿をお願いします」
というメールを送っても、そのときの感動は薄れています。
例えば、
「今回の対応はいかがでしたか。同じことで困っている方が会社選びをする際の参考になりますので、よろしければ率直なご感想をお寄せください」
程度で十分です。
その場で書くよう強要する必要もありません。
QRコードや口コミページへのリンクだけ渡して、お客様自身に判断してもらいます。
良い口コミより「具体的な口コミ」が会社を強くする
星5が50件。
確かに見栄えは良いでしょう。
ただ、
「良かったです」
「最高でした」
「またお願いします」
だけでは、初めて見る人にはサービスの違いが伝わりにくいものです。
企業にとって価値が高いのは、
「急な故障で電話したところ、その日の夕方に来てくれました。交換が必要だと思っていましたが、部品修理だけで済み、料金の理由まで説明してくれました」
というような実体験です。
会社側が文章を指定するのではありません。
自然に具体的な感想が出てくるサービスを提供することがポイントです。
その口コミを読んだ人は、
「故障したとき、すぐ来てくれる会社なんだ」
「必要のない交換を勧めない会社なんだ」
と理解できます。
これは企業自身が、
「当社は安心です」
と100回書くより伝わる場合があります。
悪い口コミが1件入ったときこそ会社の姿勢が見える
口コミを集めるデメリットもあります。
口コミが増えれば、良い評価だけではなく厳しい評価を受ける可能性も高まります。
ここを怖がって口コミそのものを避ける会社もあります。
ただ、悪い口コミが1件付いたからといって、すぐにブランドが壊れるわけではありません。
例えば、
「予約時間から30分待たされた」
という口コミが入ったとします。
会社が無視する。
感情的に反論する。
お客様が悪いと決めつける。
こうした対応をすると、投稿した本人だけでなく、そのやり取りを読んだ人にも悪い印象が残ります。
一方で、
「お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。当日の予約管理を確認し、現在は予約間隔を見直しています」
と事実を確認したうえで返信する。
すると、その口コミを読んだ第三者には、
「問題が起きても対応する会社なんだな」
という別の情報が伝わります。
口コミ欄は評価表であると同時に、会社の姿勢が見える場所でもあるのです。
口コミで紹介された人も、結局は会社名を検索する
知人から、
「○○工務店、良かったよ」
と紹介されたとします。
以前なら、そのまま電話番号を教えてもらうケースも多かったでしょう。
現在は、スマートフォンで会社名を検索する人も少なくありません。
そこで、
ホームページが何年も更新されていない。
施工実績が見つからない。
会社概要が薄い。
Googleの情報とホームページの営業時間が違う。
SNSは3年前から止まっている。
こうした状態では、せっかくの紹介が問い合わせまで届かない可能性があります。
口コミとホームページ、SEO、SNSを別々の施策として考えると、この問題を見落とします。
実際の顧客行動は、
口コミを聞く → 会社名を検索する → ホームページを見る → 実績を確認する → 口コミを見る → 問い合わせる
というようにつながっています。
企業ブランディングとは、この一連の流れで「同じ会社らしさ」と「安心できる材料」を見せ続けることでもあります。
広告と口コミはどちらが強い?費用対効果を数字で比較する
ここで、「広告と口コミなら結局どちらがいいのか」という疑問が出てきます。
答えを一つに決める必要はありません。
広告には広告の強さがあります。
口コミには口コミの弱点もあります。
例えば新しく開業した会社は、お客様自体がまだ少ないため、口コミだけで一気に認知を広げるのは難しいでしょう。
新商品を発売したときも同じです。
誰も知らない商品について、
「口コミが広がるまで待とう」
では時間がかかります。
そんなとき広告は非常に便利です。
短期間で多くの人に存在を知らせられるからです。
一方、広告には費用がかかり続けます。
出稿を止めれば流入が大きく減るケースもあります。
口コミは広がるまで時間がかかりますが、一度信用が積み上がると、紹介や指名検索につながる可能性があります。
つまり、
広告は「出会いを作る力」が強く、口コミは「信用を広げる力」が強い。
役割が違うのです。
広告費30万円を「30件の問い合わせ」で終わらせない
例えば月30万円の広告費で、30件の問い合わせが来たとします。
10件が契約したとしましょう。
ここで広告の仕事を終わらせる会社と、そこから先を見る会社に分かれます。
10人のお客様へ良いサービスを提供する。
そのうち3人が口コミを書いてくれる。
2人が知人へ紹介する。
半年後に2人が再度利用する。
そうなれば、最初の広告費30万円は単に「10件の契約を取る費用」ではありません。
口コミ、紹介、リピートが始まるきっかけを作った30万円になります。
反対に10人全員が一度利用して終われば、翌月も同じように新しい顧客を広告で探さなければなりません。
広告費が高いか安いかは、金額だけでは判断できないのです。
見るべき数字を「広告費」から「顧客のその後」へ変える
広告運用では、クリック率や問い合わせ単価などの数字がよく使われます。
もちろん確認したい数字ですが、中小企業ならもっと分かりやすくても構いません。
例えば毎月、
「新規問い合わせは何件だったか」
「そのうち契約は何件だったか」
「リピーターは何人いたか」
「紹介から何件問い合わせが来たか」
「口コミは何件増えたか」
を記録します。
ここで面白いことが分かる場合があります。
広告からの問い合わせは減ったのに、売上は増えている。
調べてみたら紹介客の成約率が高かった。
あるいは、新規客は多いのに半年後には誰も戻ってこない。
数字を広告の入口だけでなく、顧客との関係まで広げて見ると、会社の本当の課題が見えてきます。
口コミが増えないなら「お願いの仕方」よりサービスを調べる
半年間で500人のお客様が利用した。
それなのに口コミがほとんど増えない。
そんなとき、
「もっと口コミをお願いしよう」
と考える前に、一度立ち止まってみます。
お客様は本当に満足しているのか。
誰かに話したくなる特徴があるのか。
競合会社との違いを感じてもらえているのか。
スタッフの対応にばらつきはないか。
利用後に会社を思い出す機会があるのか。
口コミが少ないこと自体が、サービスを見直すきっかけになる場合があります。
ここが広告とは違う面白いところです。
口コミは集客手段であると同時に、会社がお客様からどう見えているかを知る材料でもあります。
広告を減らすことが目的ではない
この記事で伝えたいのは、
「広告はやめて口コミだけにしましょう」
という話ではありません。
2025年の日本のインターネット広告費が初めて4兆円を超えたことからも分かるように、企業にとってデジタル広告は大きな集客手段になっています。
だからこそ、広告を「今月の売上を取る費用」だけで終わらせないことです。
広告で一人のお客様と出会う。
期待に応える。
少しだけ期待を超える。
その経験が口コミになる。
口コミを見た人が会社名を検索する。
ホームページで安心する。
そして新しい問い合わせが入る。
この循環ができれば、広告と口コミは対立しません。
むしろ互いの弱点を補い合います。
広告費を増やすか迷ったときは、金額を変更する前に一度、
「今いるお客様は、なぜ当社を誰かに紹介してくれるのだろう」
と考えてみてください。
その答えが見つからないなら、広告予算より先に改善できる場所が残っているかもしれません。
まとめ
広告費をかけても売れない会社と、口コミで自然に仕事が入る会社。
その差は、広告の上手さだけではありません。
広告で出会ったお客様を一度きりで終わらせるのか、丁寧な対応や分かりやすい説明、利用後のフォローを通じて次の信用へつなげられるのか。
その積み重ねが数年後の大きな差になります。広告には短期間で認知を広げられる強さがあり、口コミには時間がかかるという弱点があります。
だから、どちらか一方を選ぶ必要はありません。
もし今、広告費を増やそうとしているなら、その前に直近10人のお客様を思い出してみてください。
「なぜ当社を選んでくれたのか」「誰かに紹介したいと思ってくれただろうか」
この二つを実際のお客様に聞いてみるだけでも、次に広告費を使う場所、ホームページで伝えるべき強み、改善すべき接客が見えてきます。
売るために広告を増やす前に、紹介したくなる会社になれているかを確かめる。そこから企業ブランディングは大きく変わり始めます。
「なぜ選ばれないのか」を見直してみませんか?
広告を出しているのに、問い合わせにつながらない。
アクセスはあるのに、なかなか契約まで進まない。
広告を止めると、新規のお客様も来なくなってしまう。
そんなとき、広告費だけが原因とは限りません。 ホームページの見せ方、会社の強みの伝え方、口コミ、 お客様への対応、問い合わせまでの導線など、 「選ばれるまでの途中」に改善できる場所が 隠れていることがあります。
✓ 自社の強みが、お客様にきちんと伝わっているか
✓ 広告から問い合わせまでの導線に問題はないか
✓ 口コミ・紹介・リピートにつながる仕組みがあるか
✓ 「この会社に頼みたい」と思える理由が見えているか
企業ブランディング支援では、 「もっと広告を出しましょう」と決めつけるのではなく、 今ある会社の魅力や実績を見直し、 どうすればお客様に伝わり、選ばれる会社へ近づけるのかを考えます。 集客や会社の見せ方で迷っていることがあれば、お気軽にご相談ください。

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