🧑‍💼👩‍🏭106万円の壁が2026年10月に撤廃へ|パート・アルバイトの社会保険はどう変わる?具体例でわかりやすく解説🧑‍🏭👩‍💻

パートやアルバイトとして働いている人にとって、「106万円を超えないように働く」という考え方は、これまで勤務時間を決める大きな基準の一つでした。

「あと少し働きたいけれど、106万円を超えると社会保険に入らなければならないのではないか」「年末が近づいてきたから勤務日数を減らしたほうがいいのではないか」と考え、勤務先と相談しながらシフトを調整してきた人もいるでしょう。

しかし、この考え方は2026年10月から大きく変わります。

これまで短時間労働者の社会保険加入を判断する条件の一つだった「所定内賃金が月額8万8,000円以上」、いわゆる年収換算で約106万円という賃金要件が2026年10月に撤廃されるためです。

日本年金機構も2026年9月16日更新の案内で、この変更を明示しています。

ただし、ここで注意したいのは、「106万円の壁がなくなる=すべてのパート・アルバイトがすぐ社会保険に加入する」という意味ではないことです。

むしろ今後、働く人と企業の双方が確認すべき数字は、「106万円」から週20時間へと移っていきます。

さらに勤務先の企業規模も重要です。現在の51人以上という企業規模要件は、2027年10月以降、36人以上、21人以上、11人以上へと段階的に対象が広がり、2035年10月には企業規模要件そのものが撤廃される予定です。

では、2026年10月からパート・アルバイトの働き方は具体的にどう変わるのでしょう。

「年収105万円なら大丈夫なのか」

「週19時間ならどうなるのか」

「年収130万円の壁もなくなるのか」

「従業員30人の会社ならどうなるのか」

実際に起こりそうなケースに数字を入れながら詳しく見ていきます。


まず最初に、「106万円の壁」という言葉そのものを整理しておきましょう。

106万円という数字だけを見ると、

「年収が106万円を1円でも超えた瞬間に社会保険へ加入する制度」

のように思えるかもしれません。

しかし、厳密にはそうではありません。

これまで短時間労働者が健康保険・厚生年金保険の加入対象になるかを判断する際には、一定の企業で働いていることに加えて、週の所定労働時間、賃金、学生かどうかなど、複数の条件が使われてきました。

2026年9月時点では、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者について、主に、

確認する項目2026年9月時点
企業規模厚生年金保険の被保険者数51人以上
労働時間週の所定労働時間20時間以上
賃金所定内賃金 月額8万8,000円以上
学生原則として学生ではない
雇用期間2カ月を超えて雇用される見込み

という条件がポイントになります。厚生労働省

このうち、

月額8万8,000円 × 12カ月 ≒ 106万円

となるため、「106万円の壁」と呼ばれてきたわけです。

2026年10月に消えるのは「106万円という賃金条件」

今回の改正で重要なのはここです。

2026年10月から、

「所定内賃金が月額8万8,000円以上」

という賃金要件が撤廃されます。

日本年金機構は、2026年10月1日から短時間労働者に係る賃金要件の撤廃に関する制度が始まることを案内しています。

したがって、これからは、

「今年の年収はいくらになった?」

だけを見るのではなく、

「週に何時間働く契約になっているのか?」

を見ることが、これまで以上に重要になります。

たとえば、対象となる企業で働く人について考えてみましょう。

これまでは、

週20時間以上 + 月額8万8,000円以上

という二つの数字を確認する必要がありました。

ところが賃金要件が撤廃されれば、

「月額8万8,000円を超えたか」

という判定がなくなります。

厚生労働省も、今回の改正について、最終的には企業規模要件と賃金要件を撤廃し、短時間労働者について「週20時間以上」という労働時間を中心とした仕組みに移行する方向を示しています。厚生労働省

なぜ106万円の壁をなくすのか

背景には最低賃金の上昇があります。

厚生労働省は、最低賃金以上で週20時間以上働く場合には月額8万8,000円以上となるため、賃金要件を意識する必要性がなくなってきたと説明しています。

全国の最低賃金が時給1,016円以上となったことで、

時給1,016円 × 週20時間

という働き方をすれば、月額換算でおおむね8万8,000円以上になります。

つまり、

「週20時間働いているのに、賃金要件だけ満たしていない」

というケースが通常の最低賃金の下では基本的に生じにくくなったわけです。厚生労働省

ただし「130万円の壁」は別の話

ここは非常に重要です。

106万円の壁が撤廃されても、130万円という数字まで同時になくなるわけではありません。

この二つは同じ「年収の壁」と呼ばれるため混同されやすいのですが、仕組みが違います。

厚生労働省も、従業員数50人超の企業で週20時間以上勤務する場合に関係する106万円の壁と、それ以外の場合などに問題となる130万円の壁を分けて説明しています。厚生労働省

さらに2026年4月1日以降、被扶養者の年間収入については、労働条件通知書などに記載された賃金から見込まれる年間収入が130万円未満で、その他の条件も満たす場合、原則として被扶養者として取り扱う新しい運用が始まっています。年金積立金管理運用独立行政法人

したがって、

「106万円がなくなるから、扶養を気にせずいくらでも働ける」

と理解するのは正確ではありません。

変わるのは「会社の大きさ」

そして、今回の記事で106万円と同じくらい覚えておきたいのが企業規模です。

現在は原則として厚生年金保険の被保険者数51人以上の企業等が一つの基準となっていますが、この基準も段階的に引き下げられます。

時期対象となる企業規模
2027年9月まで51人以上
2027年10月~36人以上
2029年10月~21人以上
2032年10月~11人以上
2035年10月~企業規模要件を撤廃

厚生労働省は、この企業規模要件を10年かけて段階的に縮小し、最終的に撤廃する方針を示しています。厚生労働省

ここまでを見ると、制度変更の方向性がかなりはっきりします。

これまでは、

「年収106万円を超えるか」

が注目されていました。

これからは、

「週20時間以上働くのか」
「勤務先が社会保険の適用拡大対象なのか」

という二つの確認が非常に重要になります。

つまり、企業側も従業員側も「年収だけを管理する」という考え方から切り替えていく必要があるのです。


ここからは一般論ではなく、実際の職場を想定して考えてみます。

ケース1|年収105万円だから社会保険に入らなくていい?

たとえばAさんが、従業員数51人以上の企業でパートとして働いているとします。

勤務契約は、

週20時間

です。

年間の給与が仮に105万円程度だったとしましょう。

以前であれば、

「106万円未満だから大丈夫なのでは?」

という発想が出てきます。

しかし2026年10月以降は、月額8万8,000円以上という賃金要件自体が撤廃されます。

そのため、単純に

年収105万円 < 106万円

という計算だけで加入対象外と判断することはできません。

確認すべきなのは週の所定労働時間などです。

これが「106万円の壁がなくなる」という制度変更の実務上の意味です。


ケース2|週19時間で働いている場合は?

Bさんは対象企業で、

1日3時間48分 × 週5日=週19時間

という契約で働いているとします。

この場合、「週20時間以上」という条件を満たしていません。

したがって、短時間労働者に関する20時間基準だけを見ると対象にはなりません。

ただし、

「契約書を19時間にしておけば、実際には毎週25時間働いても大丈夫」

という意味ではありません。

厚生労働省のQ&Aでは、所定労働時間が週20時間未満でも、実際の労働時間が2カ月連続で週20時間以上となり、その状態が今後も続くと見込まれる場合には、3カ月目から加入対象になると説明されています。

ここは企業側が特に注意したいところです。

契約書だけ19時間にして、毎週恒常的に20時間を超えて働かせるような運用をしている場合、単純に「契約上19時間だから対象外」と判断するのは危険です。


ケース3|週20時間ぴったりなら?

Cさんの所定労働時間を、

1日4時間 × 週5日=週20時間

とします。

この場合、

20時間「超」ではなく、20時間「以上」

です。

したがって、20時間ちょうどでも労働時間要件を満たします。

「20時間を超えなければ大丈夫」と覚えてしまうと、ここで間違えます。

境界線は、

19時間59分と20時間

の間にあると考えるほうが理解しやすいでしょう。

もちろん、実際の加入判断では企業規模、学生かどうか、雇用期間など他の条件も確認する必要があります。


ケース4|従業員30人の会社なら2026年10月から対象?

ここも非常に重要です。

Dさんは従業員30人規模の会社で、

週25時間

働いているとします。

「106万円の壁が2026年10月に撤廃されるのだから、10月から社会保険に加入するのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、賃金要件の撤廃と企業規模要件の撤廃は同時ではありません。

企業規模要件は段階的に変更されます。

36人以上の企業が対象となるのは2027年10月。

21人以上へ広がるのは2029年10月です。

したがって30人規模の企業であれば、企業規模だけで考えると、原則として2029年10月の拡大が重要な節目になります。

ただし、任意特定適用事業所など別の事情がある場合は扱いが異なるため、自社の適用状況を確認する必要があります。


ケース5|従業員15人の会社なら?

次にE社を、

従業員15人

とします。

15人規模の場合は、

2027年10月の「36人以上」には該当しません。

2029年10月の「21人以上」にも該当しません。

しかし、

2032年10月から11人以上

へ対象が拡大されます。

したがって、現在は社会保険の適用拡大について「うちは小さな会社だから関係ない」と考えている企業でも、数年後には状況が変わる可能性があります。

企業経営者にとって重要なのは、2032年になって突然対応を始めるのではなく、

人件費
会社負担分の社会保険料
給与計算
雇用契約
シフト
採用条件

などへの影響を事前に把握しておくことです。


ケース6|年収120万円、週18時間なら?

たとえば時給が高く、

週18時間しか働いていないものの、年収120万円

になったとします。

ここで、

「106万円を超えているから社会保険加入」

と判断するのは正確ではありません。

今回の制度変更では、まさにこうした「年収だけを見る考え方」から離れる必要があります。

短時間労働者については週20時間以上という労働時間要件が重要です。

つまり、

120万円だから加入

でもなければ、

105万円だから加入しない

でもありません。

勤務先の適用状況、週の所定労働時間、学生かどうか、雇用期間などを確認して判断する必要があります。


ケース7|週19時間契約なのに繁忙期だけ25時間になった

飲食店、小売店、宿泊業、物流などでは、このケースも現実的です。

通常は週19時間。

ところが年末などの繁忙期だけ、

週25時間

になったとします。

一時的な増加だけで直ちに同じ扱いになるとは限りません。

厚生労働省は、特定の月だけ例外的に労働時間が長い場合などについて判断方法を示しています。

一方で、週20時間以上の実労働が2カ月連続し、その後も続くと見込まれる場合には3カ月目から加入対象となる取扱いがあります。

つまり企業側では、

契約時間だけでなく、実際の勤務実績も確認する

必要が出てきます。


ケース8|「社会保険に入る=単純に損」なのか

ここも数字だけで判断しないほうがよい部分です。

社会保険へ加入すると本人負担の保険料が発生するため、加入直後に給与明細を見ると、それまでより手取りが減るケースがあります。

しかし、それだけで制度全体を判断することはできません。

厚生年金へ加入すれば、その加入実績が将来受け取る厚生年金に反映されます。

また健康保険についても、一定の要件を満たせば傷病手当金などの給付があります。

そして保険料は原則として労使で負担します。

したがって、

「社会保険料が引かれるから損」

という一面だけではなく、

現在の手取り・会社負担・保障・将来の年金

まで含めて考える必要があります。


企業側には「保険料調整」という新しい論点もある

2026年10月以降、企業側にはもう一つ確認しておきたい制度があります。

社会保険加入によって短時間労働者の手取りが減り、働く時間を抑える動きが生じることを緩和するため、一定の事業所について、事業主が通常の労使折半より多く保険料を負担する保険料調整制度が設けられています。

日本年金機構は、標準報酬月額8万8,000円の場合、一定の仕組みの下で労働者側の負担割合を50%から25%へ調整するイメージなどを示しています。対象事業所・対象者・期間・申出などには条件がありますので、すべての企業で自動的に適用される制度ではありません。

これは企業経営の視点ではかなり重要です。

「106万円の壁がなくなる」

というニュースだけを見るのではなく、

従業員の働き控えをどう防ぐか

という人材確保の問題として考える必要があるからです。

たとえばパート従業員20人が、それぞれ週19時間に勤務を抑えている会社があるとします。

1人が週3時間多く働けば、

3時間 × 20人=週60時間

です。

月4週なら約240時間。

単純計算では、フルタイム従業員約1.5人分に相当する労働時間になります。

つまり「年収の壁」は従業員個人の問題だけではありません。

企業側にとっては、

採用人数を増やすのか、既存従業員に長く働いてもらうのか、社会保険料を負担して人材を確保するのか

という人員配置そのものに関係する問題です。

2026年10月の変更を機に、経営者や人事担当者はパート・アルバイトの雇用契約書を一度並べて、

「年収はいくらか」ではなく「週何時間の契約になっているか」

を確認しておくことが重要になります。


2026年10月1日から、短時間労働者の社会保険加入に使われてきた月額8万8,000円以上、年収換算約106万円という賃金要件が撤廃されます。日本年金機構も2026年9月時点で、この変更について正式に案内しています。

ただし、これを「社会保険に年収の基準が一切なくなる」と理解してはいけません。

106万円の賃金要件と、被扶養者認定などで問題になる130万円基準は別の仕組みだからです。

そして、今後さらに重要になる数字が、

「週20時間」

です。

加えて企業規模要件も、2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上へと段階的に広がり、2035年10月には撤廃される予定です。

企業側から見ると、この改正は単なる「パート従業員の年金制度変更」ではありません。

社会保険料の会社負担、人件費、シフト設計、採用人数、人材定着、給与設計まで関係してきます。

これまで、

「106万円を超えないようにしてください」

という会話が中心だった職場でも、これからは、

「週何時間働きたいですか」
「社会保険へ加入した場合の手取りはどうなりますか」
「会社としてどの働き方を用意できますか」

という話し合いへ変わっていく可能性があります。

106万円という数字だけを見る時代から、労働時間と社会保険をセットで考える時代へ。

パート・アルバイト本人だけでなく、経営者、人事・労務担当者にとっても、2026年10月は働き方を見直す重要な節目となります。


制度は勤務先の適用状況や本人の働き方によって扱いが変わるため、実際の手続きでは以下の公的情報を確認してください。

※この記事は2026年9月29日時点の厚生労働省・日本年金機構の公表情報を基に整理しています。個別の加入判定は勤務先の適用状況、雇用契約、実際の労働時間等によって異なるため、最終的には勤務先、日本年金機構・年金事務所等で確認することが重要です。

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