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飲食店でAIを使うなら、「AIを導入する」という大きな話から考えないほうが分かりやすくなります。
たとえば、30席の居酒屋を経営している店主が、15時に店へ入り、仕込みを確認しながらInstagramを更新するとします。
今日売りたいのは、仕入れたばかりの刺身盛り合わせです。
写真は撮りました。
ところが、「今日は新鮮なお刺身をご用意しています。ぜひお越しください」まで書いたところで手が止まる。
この文章を考えるために10分使うのであれば、そこをAIに任せます。
ほかにも、Googleマップに入った口コミへの返信、新メニューの名前、歓送迎会の告知、アルバイト募集、店頭POP、LINE配信用の文章など、飲食店には「料理とは直接関係ないのに時間を取られる仕事」がかなりあります。
AIを使う場所は、まずここです。
料理を作らせるためではありません。
接客をなくすためでもありません。
店主やスタッフが毎日10分、20分、30分と使っている「考えて文章にする仕事」を短くし、その時間を仕込み、接客、清掃、商品開発、常連客とのコミュニケーションへ戻す。
飲食店では、この使い方から始めるとAIの効果が見えやすくなります。
集客・口コミ・メニュー・求人を実際の店舗業務に落とし込む
飲食店でAIを使うなら、まずInstagramから始めてみると分かりやすいでしょう。毎日の投稿をすべてAIに任せるのではなく、「今日は何を投稿しよう」と考えている時間を短くするために使います。
たとえば金曜日の夕方、19時台のテーブルが2卓だけ空いていたとします。
店には今日仕入れた地鶏があり、店主としては地鶏の炭火焼をおすすめしたい。そこで「19時台に2卓空いていること」「今日のおすすめは地鶏の炭火焼であること」「仕事帰りのお客様に来てほしいこと」をAIに伝え、Instagramの文章を作ってもらいます。
あとは、できあがった文章を店主が少し直して投稿するだけです。これなら「今日は何を書こう」とスマートフォンの前で15分考えていた時間を、かなり短くできます。
もう少し便利に使うなら、1週間分を先に考えてもらいます。
月曜日は今週のおすすめ料理、火曜日は仕込みの様子、水曜日は平日の空席案内、木曜日は週末の予約状況、金曜日は当日の空席、土曜日は数量限定料理、日曜日は翌週のお知らせ、といった具合です。
AIに作ってもらうのは、あくまで文章の土台です。当日の予約が増えたら席数を直し、おすすめ料理が売り切れたら別の料理へ変更するなど、最後は必ず店側で現在の状況に合わせます。
これならAIを使う目的がはっきりします。
「InstagramをAIにやらせる」のではなく、「Instagramの文章を毎回ゼロから考えなくて済むようにする」ということです。
口コミへの返信にも使えます。
「料理はおいしかったけれど、出てくるまで遅かった」という口コミが入ったとき、店主がその場の感情で返信するのではなく、AIに丁寧な返信の下書きを作ってもらいます。
ただし、ここでも全部は任せません。実際に料理の提供が遅れていたのか、その日は店内がどういう状況だったのかを確認するのは店側です。
AIには文章を整えてもらい、事実は店側が確認する。
この分け方なら、口コミ返信にも使いやすくなります。
新メニューを考えるときも便利です。
たとえば焼鳥店で、鶏肉、長ねぎ、キャベツ、卵などを普段から仕入れているとします。新メニューのためだけに別の食材を増やすと、売れなかったときに食材が余ってしまいます。
そこで「いま店にある食材で作れる500〜800円程度のサイドメニューを考えて」とAIに頼み、候補をまとめて出してもらいます。
10品出てきたら、その中から料理人が「これは作れそう」「これは原価が高い」「これは忙しい時間には作れない」と選別します。AIに料理を決めてもらうのではなく、最初のアイデアを出すところだけ手伝ってもらうわけです。
メニュー名を考えるときにも使えます。
新しく地鶏の炭火焼を出すのであれば、「地鶏」「炭火」「香ばしさ」「焼酎に合う」といった商品の特徴をAIに伝え、メニュー名をいくつか考えてもらいます。
10案、20案と出してもらえば、その中に一つくらい「これなら店の雰囲気に合いそうだ」という候補が見つかるかもしれません。何もないところから店主一人で20個考えるより、候補から選ぶほうがずっと早く進みます。
店頭POPにも使えます。
「黒毛和牛の炙り・1,280円・1日10食限定」という情報を渡し、卓上に置ける短いキャッチコピーを考えてもらえば、POPの文章を一から考える必要がありません。
ここでも価格や販売数を決めるのは店側です。
AIは「何を1,280円で売ればいいか」を決めるのではなく、店側が決めた商品を「どう伝えれば分かりやすいか」を考える役として使います。
忘年会や歓送迎会の集客でも使い方は同じです。
4人の友人グループに見せる案内と、15人の会社宴会を探している幹事に見せる案内では、知りたいことが違います。会社宴会なら料理だけでなく、料金、飲み放題の時間、最大人数、席の配置、予約変更やキャンセルの条件なども重要になります。
店側が正しい条件を整理し、それをAIに渡して「4人向け」「10人向け」「会社宴会向け」と文章を作り分けてもらえば、一つの宴会コースでも複数の見せ方ができます。
求人にも使えます。
時給、勤務時間、週何日から働けるのか、まかないの有無、未経験でも応募できるのか、実際に担当する仕事などをAIへ渡し、求人サイト用の文章を作ってもらいます。
同じ情報からInstagram用の短い求人案内や、店頭に貼るPOPの文章も作れます。求人情報そのものは同じでも、掲載する場所に合わせて文章の長さを変えられるのは便利です。
ここまでの使い方には、共通点があります。
Instagramも口コミもメニューもPOPも求人も、AIに店の仕事そのものを任せているわけではありません。店側が持っている正しい情報を渡し、それを「文章にする」「候補を増やす」「短くまとめる」ところだけを手伝ってもらっています。
つまり、飲食店で最初にAIへ任せたいのは「判断」ではなく、「考える前の下ごしらえ」です。
料理でいえば、AIが材料を並べてくれるところまで。
どの材料を使い、どんな一皿にして、お客様へいくらで提供するのかを決めるのは、これまで通り店の人です。
このくらいの距離感で使うと、AIはぐっと分かりやすくなります。

売上につなげるために「AIがやる仕事」と「店主がやる仕事」を完全に分ける
AIを使えば、飲食店の仕事はかなり楽になります。Instagramの文章を考えたり、口コミへの返信案を作ったり、新しいメニューのアイデアを出したりと、これまで店主が時間を使っていた仕事を短くできるからです。
ただし、ここで一つだけ間違えてはいけないことがあります。
AIは「店のことを何でも知っている店長」ではありません。どの料理がよく売れているのか、火曜日になると客足が落ちるのはなぜなのか、常連客が何を楽しみに来ているのかといった、本当の店の姿を一番よく知っているのは店主やスタッフです。
そのため、AIに「売上を増やすにはどうしたらいい?」と聞くだけでは、なかなか役に立つ答えにはなりません。
SNSを強化する。新メニューを作る。キャンペーンをする。リピーターを増やす。このような答えが返ってきても、「それは分かっている」と感じる店主は多いのではないでしょうか。
そこで、AIへの相談をもう少し店の実情に近づけます。
たとえば「金曜日と土曜日はお客様が多いのに、火曜日と水曜日は席が空いている。値引きはしたくない。この2日間に来店してもらう方法を考えてほしい」と聞いてみます。
これなら、考えるテーマは「売上を増やす方法」ではありません。
「火曜日と水曜日の空席をどうするか」です。
AIから、平日限定の料理を作る、予約しやすい曜日としてSNSで知らせる、2人で注文しやすいメニューを作るなど、いくつかの案が出てきたとします。その中から「これならうちでもできそうだ」と思えるものだけを店主が拾えばいいのです。
AIの答えを全部実行する必要はありません。
10個出てきて、1個使えれば十分です。
新メニューについて相談するときも同じです。AIから魅力的な料理を提案されても、新しい食材を何種類も仕入れなければ作れない料理なら、小さな店では扱いにくいことがあります。
反対に、普段から仕入れている鶏肉や野菜を使い、いまの厨房設備で作れる料理なら試しやすくなります。
ここで判断するのは料理人です。
「おいしそうだから採用」ではなく、原価はいくらになるのか、仕込みが増えないか、忙しい金曜日でも作れるのか、注文が入ってから何分で出せるのかまで確認して、初めてメニューに加えるかを決めます。
AIはアイデアを出すところまで。
店で本当にできるかを決めるのは人間です。
口コミへの返信も同じ考え方です。AIに丁寧な文章を作ってもらうことはできますが、実際に何があったのかまでAIが知っているわけではありません。
「料理が出てくるのが遅かった」という口コミがあったなら、まず店側で当日の状況を確認します。そのうえで返信文をAIに整えてもらい、最後は店主自身が読み直してから投稿します。
特に、AIへ任せてはいけないこともあります。
分かりやすいのが食物アレルギーです。
お客様から「この料理に卵は入っていますか?」と聞かれたときに、AIへ料理名を入力して確認するのではなく、実際に店で使っている食材や調味料、商品の原材料表示などを確認します。
AIが「一般的には入っていません」と答えても、その店の料理に入っていない証明にはならないからです。
価格や営業時間、予約条件なども同じです。
AIが作った文章に「飲み放題120分」と書かれていても、本当に現在のコースが120分なのかは店側で確認します。1年前に使っていた料金や営業時間が混ざっていないかも、公開する前に見直します。
そしてもう一つ、気をつけたいのが情報の扱いです。
AIに売上や予約状況を相談するために、お客様の名前や電話番号まで入力する必要はありません。「19時・4名予約」と分かれば十分な分析なら、個人名を入れずに利用できます。
何を入力してよいのか。
何を入力しないのか。
店でAIを使うなら、このルールは最初に決めておいたほうがよいでしょう。
では、実際にどこから始めるのか。
最初から店の仕事を全部AIに変える必要はありません。まず「毎回面倒だと感じている仕事」を一つだけ選んでみます。
Instagramを書くのに毎回時間がかかるなら、まずInstagramだけ。
口コミ返信で悩むなら、返信文の下書きだけ。
新メニューの名前がなかなか決まらないなら、名前の候補を出してもらうところだけ。
一つ使ってみて、「これは楽になった」と感じたら続けます。逆にAIが作った文章を直すほうが時間がかかるのであれば、その仕事では無理に使わなくても構いません。
飲食店にとって大切なのは、AIをたくさん使うことではありません。
店主がパソコンやスマートフォンの前で文章を考えていた時間が少し減り、その分、お客様を見たり、料理を考えたり、スタッフと話したりする時間が増えるのであれば、それだけでもAIを使う意味があります。
AIに店を任せるのではありません。
店の仕事の中にある「ちょっと面倒」「毎回時間がかかる」という部分だけを、AIに手伝ってもらう。
このくらいの使い方から始めるほうが、飲食店にはちょうどよいのです。

AIで生まれた時間を「店を良くする時間」に変える
ここまでAIの使い方を紹介してきましたが、飲食店にとって本当に大切なのは「AIを使った」という事実ではありません。Instagramの文章が早く作れた、口コミへの返信で悩む時間が減った、新メニューの候補を短時間で出せた、その先に何が変わったのかが重要です。
たとえば、これまでInstagramの投稿を作るために毎回20分かかっていた店が、AIを使うことで10分程度に短縮できたとします。
そこで生まれた10分を、ただ休憩時間にするのも一つですが、店を良くするための時間として使うこともできます。入口のメニューを見直したり、料理写真を撮り直したり、予約表を確認したりと、10分程度でもできることは意外にあります。
厨房へ行き、今日のおすすめ料理について料理人と話すのもいいでしょう。
「この料理、もっと注文してもらうにはどう見せようか」「この付け合わせは変えたほうがいいのでは」といった話は、実際に料理を見ながら人間同士で話したほうが具体的になります。
スタッフと話す時間に使う方法もあります。
最近よく聞かれる料理は何か、注文するときに迷っているお客様が多いメニューはないか、どの料理を説明すると注文につながりやすいのか。毎日ホールに立っているスタッフだからこそ知っていることは、かなりあります。
こうした情報は、売上表だけを眺めていても分からないことがあります。
たとえば、ある料理の注文数が少なかったとしても、料理そのものに問題があるとは限りません。メニュー表の端に載っていて気づかれていない、料理名だけでは中身が分からない、スタッフも説明しにくいという可能性があります。
そこで初めてAIを使えばいいのです。
「この料理は何なのか、お客様に10秒程度で説明できる文章にしたい」「メニュー表で料理内容が分かるよう、20文字程度の説明を付けたい」と頼めば、今度は実際の店内で見つけた問題を解決するためにAIを使えます。
この順番なら、AIを使う目的がはっきりします。
AIを使って問題を探すのではなく、店で働く人が問題を見つけ、その問題を解決する一つの道具としてAIを使うわけです。
常連客との会話に時間を使うのもいいでしょう。
「前回食べたあれ、おいしかったよ」「この前のメニュー、もうないの?」「もう少し少ない量があれば注文したい」といった何気ない一言の中には、新メニューやサービスを考えるヒントが含まれていることがあります。
AIには、この会話そのものはできません。
お客様の表情を見て、「今日は急いでいそうだな」「ゆっくり飲みたいのかな」と感じ取ることも、現在のAIにすべて任せられる仕事ではありません。
だからこそ、人間がやらなくてもよい仕事を少しだけAIへ渡します。
文章を一から考える時間を減らし、候補を考える時間を減らし、同じ内容をInstagram用、求人用、店頭POP用と何度も書き直す時間を減らす。その代わりに、人が店を見る時間を増やします。
AIを導入したから店が伸びるのではありません。
AIで浮いた時間を、料理、お客様、スタッフ、店内、メニュー、サービスへ戻せる店が、AIをうまく使っている店だと考えたほうが分かりやすいでしょう。
飲食店には、AIより人間のほうが得意な仕事がたくさん残っています。
料理を食べたお客様の反応を見ること、常連客との会話から変化に気づくこと、スタッフの様子を見ること、厨房の小さな問題に気づくこと。そして「また来たい」と思ってもらえる店を作ることです。
その時間を少しでも増やすためにAIを使う。
飲食店にとっては、このくらいシンプルな考え方で十分ではないでしょうか。

まとめ
飲食店でAIを使う目的は、店の仕事をすべて自動化することではありません。
Instagramの文章、口コミ返信の下書き、メニュー名、店頭POP、求人文章など、これまで店主やスタッフが時間を使っていた仕事の一部分を手伝ってもらう。その結果として生まれた時間を、料理や接客、スタッフとの会話、お客様が過ごしやすい店づくりへ戻していきます。
最初から難しく考える必要もありません。
まずは一つ、「これを毎回考えるのが大変だな」と感じている仕事にAIを使ってみる。それで少し楽になったなら、次の仕事でも試してみるくらいで十分です。
AIが店を繁盛させてくれるわけではありません。
しかし、AIをうまく使えば、店主やスタッフが本当に時間をかけたい仕事へ戻るための助けにはなります。
AIに店を任せるのではなく、AIに店の仕事を少し手伝ってもらう。
それが、飲食店にとって一番分かりやすいAIとの付き合い方です。
参考サイト
・デジタル庁|生成AIの利用・利活用に関する情報
https://www.digital.go.jp/
・総務省|AI・情報通信に関する政策・資料
https://www.soumu.go.jp/
・経済産業省|AI・デジタル政策
https://www.meti.go.jp/
・中小企業庁|中小企業のデジタル化・生産性向上に関する情報
https://www.chusho.meti.go.jp/
・独立行政法人 中小企業基盤整備機構|中小企業向け支援・研修情報
https://www.smrj.go.jp/
・個人情報保護委員会|生成AIサービスの利用に関する注意喚起
https://www.ppc.go.jp/
・IPA 独立行政法人情報処理推進機構|AI・情報セキュリティ関連情報
https://www.ipa.go.jp/
・厚生労働省|食品・飲食店に関する衛生情報
https://www.mhlw.go.jp/
・消費者庁|食品表示・景品表示法等に関する情報
https://www.caa.go.jp/
・農林水産省|外食産業・食品産業に関する情報
https://www.maff.go.jp/
「お店をもっと良くすること」が目的です。
Instagramの発信、口コミへの返信、メニューの見せ方、 店頭POP、求人、宴会の案内、新しい集客方法。
生成AIを使えば、飲食店のさまざまな仕事を効率化できます。 しかし、本当に大切なのは「AIを導入したか」ではなく、 そこで生まれた時間やアイデアを、売上・集客・お店の魅力向上へどうつなげるかです。
CBS│企業ブランディング支援™では、 AIだけにとらわれず、店舗の見せ方、情報発信、ブランディングなど、 「この店をもっと良くしたい」という経営者・運営者の思いを大切にしています。

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